昨年夏の甲子園では1回戦で九州国際大付(福岡)に敗れ、今年の夏は高知大会の準決勝で優勝した高知中央に敗れて3年連続の甲子園出場は逃したが、この敗れた試合のスコアはいずれも1対2というロースコアだった(高知中央との試合は延長11回タイブレークによるもの)。初優勝から20年以上の時を経て、再び明徳義塾が頂点に立つということも十分に期待できそうだ。
もう1校、面白いのが明石商(兵庫)だ。中森俊介(ロッテ)、来田涼斗(オリックス)などを擁して2019年には春夏連続で甲子園ベスト4に進出。その後はなかなか激戦の兵庫を勝ち抜くことはできていないが、狭間善徳監督は明徳義塾でのコーチ経験もあることから、細かい野球を持ち味としている。守備はもちろん、目立つのは接戦になった時の1点の奪い方で、この夏の兵庫大会の準決勝でもプロ注目のエース坂井陽翔を擁する滝川二に2対1と競り勝ち、決勝は最終的にサヨナラ負けを喫したものの9回表にはスクイズで同点に追いついている。狭間監督は走者が三塁にいる時の1点の奪い方は何パターンも練習していると常々話しており、今後はそういった野球で競り勝つケースが増えることも十分考えられるだろう。
新基準のバット導入は現在の高校野球界の王者である大阪桐蔭(大阪)の野球を変える可能性もある。根尾昂(中日)や藤原恭大(ロッテ)を擁して春夏連覇を達成した2018年や、昨年春のセンバツでもホームランで打ち勝つ野球が目立った一方で、以前に比べて細かい守備のミスが目立つようになったという声も多い。かつてのような守備でも相手を圧倒するようなチームを再び作ることができるかに注目だ。
ただその一方で強豪と呼ばれるチームはそれほど大きな影響はないのではという声があることも事実だ。冬のオフの期間に、甲子園常連校の取材に訪れた時に新基準のバットの話になったが、試作品を練習で使ってみたところ、選手の感想はそれほど大きな変化は感じないというものだった。かつて2001年に900g未満のバットが禁止された経緯があるが、甲子園大会に限ってみると、ホームラン数が劇的に減少したという事実はない。