■残す物の数や量上限を決める
「親の死後は、実家にある物全てが思い出になってしまうもの。また親族の間で揉めて、捨てたくても物を捨てられなくなるケースも見られます。つい片付けるのを先延ばしにし、何年も空き家になって放置される事態が頻出しているのです」(渡部さん)
家財の整理は大仕事だが、親が亡くなるとき、子どもも決して若いとは言えない年齢に差しかかっていることが多い。そのため体力的に負担が大きく、体調を崩してしまう人も多いという。そうならないためにも、遺品整理を上手に進めるにはどんなコツがあるのか。ここからは家財整理のプロとして、これまで数多くの遺品整理を手がけてきた上野貴子さん(ワンズライフ代表取締役・遺品整理士)の話をもとに、効率的に片付けるためのコツを紹介しよう。
まずは(1)手元に残しておきたい物の数や量を決めておくこと。貴重品は必須であるため、それ以外で考える。具体的には、自分の今の収納スペースなどを考え、持ち帰るのは一人(一家族)10個だけと絞ったり、段ボール箱一つだけなどと、上限を設定する。
「家財の整理は、大量の情報の中から必要な情報を探し出す作業と似ています。“無人島に持っていける本が3冊しかないとしたら”を考えるのと同じ感覚で、本当に手元に残しておきたい物だけを、あくまで上限の範囲内で選んでください」(上野さん)
次に(2)無駄をなくすために、一方向に片付けること。例えば「手前から奥へ」や「時計回り」のように方向を決めておけば、同じ場所を何度も片付ける手間を省ける。
「弊社では、どの部屋においても、入り口を起点に、時計回りに片付けるようにしています。一方向で作業をして、確実に片付けていく。そうすることで、あちこち手をつけて、後でどこまで片付けたかわからなくなるというような非効率を防ぐことができ、無駄がありません」(同)
そして(3)片付けを始める前に、仕分けの数だけ段ボールを用意する。仕分け方は、例えば「金品」「権利証などの書類」「写真、日記などの思い出の品」「仏具などの供養品」など残すものと、それ以外の「リサイクル物(古紙・布・鉄や銅・食器など)」など。捨てる物はそのままゴミ収集に出せるよう、ゴミ袋に入れていくのでOK。例えば一つの棚を片付けるとき、これは写真、これは通帳などと、パッと分類して入れられる物を作るというわけだ。