遠距離で暮らしているのも、片付けが進まない要因の一つだ。サトコさんも、妹とともにまとまった期間帰省して、一気に片付けようとはしてみたが、現実は見通しと全く違い、10%も片付けが進まなかった。少しずつでも片付けられたら良いのだが、遠方に住んでいるため、帰省のたびに旅費がかさむ。「交通費ももったいないし、いずれそのうちまとめて片付けよう」と先延ばしにしているうちに、2年が経ってしまったというわけだ。サトコさんは言う。

「遺品の片付けは大変だから、なるべく生前にやったほうがいいと言われる理由がよくわかりました。これ以上先延ばしにすると、余計に費用がかかるし、私たちも年をとるほどに片付けがもっと大変になる。だから早々に業者に入ってもらって、期限を決めて片付けることにしました」

 空き家問題や実家じまいなどが取り沙汰されて久しい現在、サトコさんのように、遺品整理に頭を悩ませる声が多く聞かれる。実家の片付けを大別すると、「生前整理」と「遺品整理」の2種類に分けられる。前者は将来にわたって本人が暮らしやすくし、本人がいなくなった後に家族が困らないためにする、物と情報の片付け。後者は本人が亡くなってから周りの家族が片付けることを指す。どちらも基本的には日用品や生活雑貨、家具、家電などを片付ける「家財の整理」で、内容としては大きく変わらない。

 ただし遺品整理の場合は、物の持ち主である親の意思がわからないため、「いる・いらない」の判断が難しく、精神的な負担が家族に大きくのしかかることになりやすい。

「『親が生きているうちは捨てられないから、亡くなってから全部捨てたらいい』と言う人がけっこういますが、この方法は正解と言えないことがほとんどです」とは、実家片づけアドバイザーとして活躍する渡部亜矢さん(実家片づけ整理協会代表理事)。その理由は、前出のサトコさんがそうであったように、親が亡くなってからは悲しみのあまり、何も手をつけることができない遺族が多いためだという。

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