プロスケーター 羽生結弦(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 プロ転向から約1年。表現者・羽生結弦の進化が止まらない。「僕はフィギュアスケートしかやってないなって思ったんですよ」。本誌独占インタビューで、言葉を選びながらそう語った。AERA 2023年8月14-21日合併号の記事を紹介する。

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 撮影が始まる。羽生結弦はこの日用意された服を身にまとうと、その衣装に沿う形でさまざまなポーズを、表情を、しぐさをしてみせる。それらの一つ一つが服や赤い薔薇の花に満ちたセットと絶妙にマッチしていて、驚嘆の声が撮影を見守る人々から何度も起こる。

「最近はその服を着たときにどういうふうに見えているのかを客観視していて、この服はどう見せてもらいたいのかな、というのを思うようにしています。ちょっと突拍子もないかもしれないですけれど、『この子はどう見られたいのかな』と服の声を聞いたりするようなイメージで動いています。それに加えて、(撮影する)蜷川実花さんはどういう視点から写真を撮っていて、どういう雰囲気を受け取りたいのかなと考えつつ、勝手に動いているみたいな感じですね」

 それはこの半年の中で生まれた変化であると言う。

「半年くらい前まではプログラムじゃないですけど、スタジオの雰囲気を感じたりとかしながら自分の意思で動いている感じでした。でも撮影の中で服の素材のすごみのようなものを初めて感じることがあって、『服ってこんなに意思があるんだな』と思ってから変わったと思います」

 それは撮影という一つのシチュエーションの中でも新たな表現の方法を得たことになるのではないか。

「そうですね」

 羽生はうなずく。

 ポーズやしぐさを指示されて演じているわけではない。だからこそ、服のテイストを捉えつつセットの中にたたずむ自身の姿を客観視し、服やセットを引き立たせて「演じ切る」姿は、羽生結弦が際立った表現者であることをあらためて実感させた。(ライター・松原孝臣)

※現在発売中のAERA 2023年8月14-21日合併号では、羽生さんのロングインタビューを掲載しています。そちらもあわせてご覧ください。

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