■長女の花火の楽しみ方

 さて。医療的ケア児の長女は「花火」というものを理解していません。打ち上がる花火を目で追って、花が開く瞬間を楽しむということも、もちろんできません。砂浜で見る花火は身体に振動が響くので、最初に花火を見せた時には大きな音にびっくりするかと心配でしたが、ドン!と音がすると目をパチパチし、その後はニヤッと笑っていました。慣れてくると、視線は花火とは全く別のところにありますが、ヒュー!と打ち上がる音に合わせて声を出すこともあり、彼女は彼女なりに花火を楽しんでいたようです。

 その後、日本では相変わらず人混みを避けて生活をしているため、我が家の子どもたちはハワイ以外で花火を見たことがないまま2023年になりました。今振り返ると、今回書いたエピソードはとても良い思い出です。そしていつの間にか、次女が大好きな彼と一緒に花火大会に行く年齢になったことに、月日がたつ早さと子どもたちの成長を感じています。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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