A氏は、体のフォルムやサイズ的にドアラのアクターは男性だと予想するが、ドアラ含め、人気マスコットの “中の人”が誰なのかは業界内でも知られていない。

 先日、A氏の会社に所属するアクターがくまモン(本県)と共演したが、くまモンは出番以外のときも、決して着ぐるみを脱がなかったという。ドアラや、つば九郎のようなスター級マスコットであれば、同じチームの選手さえ、“中の人”を知らない可能性もある。

 なぜマスコットたちは、ここまで徹底して、秘密のベールに包まれているのか。A氏によると、1983年の東京ディズニーランド開園を機に、「観客の夢を壊さないために、着ぐるみの中に人がいると思わせてはいけない」というディズニー流の価値観が広まったのだという。そのため、業界のリアルな内情を明かすことはよしとされておらず、A氏は取材の前、「企業名や私の名前は伏せてくださいね」と、念を押した。

 それでも、取材に応じた理由とは?

「求人サイトのCMの影響などもあって、着ぐるみはアルバイトがやる仕事と思っている人が多いんです。でも、着ぐるみアクターは、れっきとした役者。みんな、日々地道な訓練と努力を重ねていることを知ってもらえたらうれしいなと」

 ふんわりぽってりとした体の内に、人知れずたたえられた、汗と涙。何事にも、プロの道があるということだ。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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