実際、6月19日に都内の中華料理店で開かれた立憲のとあるグループの会合では、泉房穂氏の比例1位擁立案が話題にあがり、会を主催した重鎮議員が「近畿選出議員の比例復活を圧迫するような話でけしからん」と怒りを露わにした。
そして、この重鎮議員と親しく、会合に司会のような役回りで参加していたのが徳永氏だったのだ。
この会合に参加していた別の立憲議員は語る。
「泉房穂氏の擁立案について重鎮議員から怒りがぶちまけられたのは会合の冒頭あいさつだった。徳永氏と親しいということもあって、擁立を阻止したいという思いもあったのではないか。しかし、徳永氏は自身が窮地に立たされたことに耐えることができず、離党の引き金となってしまったようだ」
結局、6月に解散はされず、選挙を巡る騒動は落ち着きを見せているが、その後も立憲内で泉房穂氏の擁立案は浮上し続けているという。
「泉房穂氏にも十分勝機はある」とする根拠
近畿ブロック内の立憲幹部は語る。
「選挙まで期間が空いたので、泉房穂氏とは小選挙区での出馬も含めてじっくり検討して準備ができるようになった。明石市を含む兵庫9区は安倍派5人衆の1人、西村康稔氏の牙城だが、西村氏が強い淡路島と明石市の人口比率は約1対3。泉房穂氏にも十分勝機はある」
次期衆院選に向けて様々な思惑が錯綜するなか、果たして立憲は泉房穂氏を擁立するに至るのだろうか。
しかし、いくら他人の人気にあやかろうと思っても、党を支えている足元の議員たちとすれ違っていては、党勢を立て直すことなどできない。まずは選挙に向けて党内の議員が一丸となれるように、所属議員と意思疎通を図ることが立憲執行部には求められているのではないだろうか。
(ジャーナリスト・宮原健太)
■みやはら・けんた 1992年生まれ。2015年に東京大学を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡で事件記者をした後、政治部で首相官邸や国会、外務省などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動。YouTubeチャンネル「記者YouTuber宮原健太」でニュースに関する動画を配信しているほか、「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしても活動している。取材過程に参加してもらうオンラインサロンのような新しい報道を実践している。