小学校でもタブレットを使い授業を行う時代になり、SNSを利用する層の低年齢化は進む。それにあわせ、デジタル性被害に巻き込まれる子どもたちが増えている(写真:gettyimages)
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 ネットに裸の画像をさらされる、小型カメラで盗撮される──。デジタル機器を利用した「デジタル性被害」に巻き込まれる人が増えている。処罰する法律の枠組みはできたが、課題は残る。防ぐにはどうすればいいか。AERA 2023年8月7日号から。

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 タブレットには、小学6年のころの娘の裸の写真が入っていた。

 この写真は何!?──。

 首都圏に住む娘の50代の母親は言葉をなくした。

 いま19歳になった娘が、中学1年の時のことだ。風呂場や家で一人になれる場所でタブレットを使っているのが気になった。娘が寝ている間にタブレットを見ると、娘の裸の写真が入っていた。

 驚いて娘に聞くと、ゲームのチャット機能で知り合った20代の男から、「身体の部分的な写真を送って」と言われ、「いいね」を増やし注目され有名になりたいため送信したと話した。娘は二度と同じようなことはしないと母親に約束した。だが、その後も別の複数の男に性的画像を送信し、そこで知り合った複数の男と直接会い、性的被害を受けていたこともわかった。

 子どもの時に受けた性暴力被害は、心に深い傷を刻み込む。

 娘は複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、うつやフラッシュバックに苦しめられている。しかも、一度ネットにアップされた画像を完全に削除するのはほぼ不可能だ。

 裸の画像は、今もアダルトサイトなどに出回っている。日本から出ていきたい、私のことを知らない社会で生きたいと話しているという。母親は言う。

「ネットの危険性は子どもに教えてきて、本人も知っているはずでした。まさか私の子が、という思いです」

 性的な画像や動画がSNSを通じネット上に拡散される「デジタル性被害」が深刻化している。

 警察庁の統計によれば、2022年に「自画撮り被害に遭った児童」は577人と過去2番目に高い値となり、12年(207人)と比べ約2.8倍に増加した。

 デジタル性被害の被害者を支援する「性暴力被害者の会」代表の郡司真子さんは、若年層にデジタル性被害が増えた背景には「スマホによって承認欲求と自己肯定感を簡単に得られることが大きいと思います」と指摘する。

送信相手はネット上の見知らぬ人が約半数

「加害者側からは、若いうちにしかできないなどと言われグルーミングされるため、裸体を自分の価値だと勘違いしやすくなります」

 グルーミングとは、わいせつ目的を隠し子どもに接近し手なずける行為で、性的被害に遭う恐れがある。郡司さんによれば、子どもの時に性的被害を受けると回復が難しいという。

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