子どもの受験合格のためには、母親は仕事をセーブして支えなくてはならないのだろうか──。管理職やフルタイム勤務で、忙しく働く女性のなかには、こう思い悩む人もいるのではないか。女性がキャリアと子の受験を両立するのは可能なのか。働く母親のもとで育った現役東大生や卒業生の声から探った。AERA 2023年7月31日号の記事を紹介する。
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働く母親は、東大生や卒業生の目にはどう映っていたのか。
東大卒の医師、鶴田優希さん(31)=あおぞらクリニック眼科形成外科副院長=は言う。
「小さなころは母に勉強の習慣を付けてもらいましたが、成長してからはなくなりました」
母親は、鶴田さんが小学生のときは働いておらず、中学受験のスケジュールや教材の管理をしてくれていた。そのかいあって、鶴田さんは都内の名門校である桜蔭中学校に合格。鶴田さんと妹の中学受験が終わってから、母親は看護師としてフルタイムで復職した。
「中学以降は、親に管理されることはなかったです。『勉強しなさい』と言われることもありませんでした。ただ、成績は把握していたので、うまくいかなかったときは、バシッと言ってくれました」(鶴田さん)
河合塾の東大専門特化校舎である本郷校の功刀亮(くぬぎりょう)校舎長は言う。
「大学志望者の中で東大志望者だから管理職のお母さまが少ないということはないと感じています。実際に東大志望者の親御さんでも、管理職や医師の方などは遅い時間までお仕事をされていて、なかなか電話がつながらない方もいらっしゃいます」
また、保護者の忙しさと子どもの受験がうまくいくかは別問題だと言う。
「お母さまが専業主婦でも、忙しい管理職でも、東大受験には問題ありません。無関心と放任は違うからです」(功刀さん)
確かに、中学受験の場合は、親が子どもの横に付くことは学習の習慣付けを促す意味もあるが、大学受験となると、親の関わり方は変わってくる。
「高校2、3年生、浪人生になる頃には、お子さんを信用して一歩引いて見ている家庭が受験に成功する印象があります」(同)