中高大と英語教育を受けてきたけど、英語がうまく話せない──。大人になってから英会話の勉強をやり直したい人も多いだろう。効果的な勉強法は何か、どうすれば継続できるのか。脳科学の観点から専門家が解説する。AERA 2023年7月31日号から。
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大人になってから英会話をやり直すならまずは「音」、つまりリスニングから。東北大学加齢医学研究所教授で脳医学者の瀧靖之さんの考えだ。「中学英語のテキストや単語帳を買ってきて『読む、書く』を勉強するのではなく、母国語である日本語を獲得した同じ順番で、リスニングとスピーキングから入るべきです」と話す。
「何歳になっても、脳には可塑性(かそせい)という『変化する力』がある。50歳からでも80歳からでも、思い立った日から始めれば、確実にリスニングもスピーキングもできるようになるはずです」
そして、そのときに重要になるのが、「英語に親しみや好奇心を持つこと」だという。
「脳には感情に関わる『扁桃体(へんとうたい)』と記憶に関わる『海馬』という部位がありますが、記憶と感情は非常に密接な相関があります。私たちはワクワクすること、感情的にポジティブなことについては記憶力が高まると言われている。まず英語に興味を持ち、楽しいと思うことが大切です。何のために自分は英語を勉強し直すのか、英語が話せるようになったらどんな楽しいことが待ち受けているのか、ポジティブなマインドセットを作ることも必須です」
では、どう勉強していくか。瀧さんは「脳のある性質」をうまく利用すべきと話す。それは、脳の「真似をしたがる性質」だ。
「私たちは、箸を持ったり言葉を覚えるなど、運動や動作のやり方を模倣で獲得していくと言われています。脳の中には『ミラーニューロンシステム』という模倣に特化した脳の機能がある。英会話のリスニングも『模倣する力』をうまく利用し、ネイティブが話していることをとにかくたくさん聞き、真似てしゃべってみるトレーニングをするのが一番だと思います」
実は瀧さん自身も、30歳を過ぎるまで、英語は読めても聞き取りや会話はからっきしだった。一念発起して浴びるようにリスニングと模倣を繰り返し、いつの間にか「面白いほど」ネイティブの英語に耳が慣れたという。