東大生の母親世代は、おそらく40、50代。
「この世代が出産した当時は、育休制度が整っていませんでしたから、結婚・出産後も働き続けたり、ゆくゆくは管理職になったりすることが当たり前ではありませんでした」(国保さん)
そもそも働き続ける母親が少ない世代だというのだ。実際に、今の20代前半の子どもを持つ母親たちは出産をきっかけに常勤をやめている。前出の厚労省の調査によると、01年に生まれた子どもの母親は、出産1年前に常勤が32.8%だったのが、出産半年後に16.1%に落ち込み、子どもが中学3年時は24.5%だった。
では、やっぱり忙しい家庭の子どもを東大に送り込むのは難しいのか。
国保さんは、忙しい管理職だからこそ、子どものためにできることがあると言う。
「子どもの勉強を見る時間を取れなくても、そのぶん仕事で得た知識や管理スキル、収入を使って塾に子どもを入れることができます。家庭だけで完結させる発想はあまりないのではないでしょうか」
国保さん自身も幼い子どももいる。管理職は確かに忙しい。
「でも、私自身はこれ以上、子どもとの時間を増やすべきだとは思っていないんですよね」
昼間は仕事に集中して、終わったら子どもに集中できる。宿題の話を聞いたり、一緒にゲームしたり、絵本を読んだり。
「子どもを育てるのは、親だけではありません。保育園や学校の先生と一緒に育てたいと思っています」(国保さん)
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2023年7月31日号より抜粋