一方、トランプ前大統領は「米国にとって素晴らしい日だ」と歓迎。「並外れた能力と成功に必要なものの全てを備え、将来米国に偉大さをもたらす人々が、ついに報われる」とのメールを支持者らに送った。
大学関係者は、マイノリティーが一定の割合で難関大学に入学できるようにするには、アファーマティブ・アクションに代わる措置はないとしている。
しかし、大学や難関高校などは、入学選考基準の大幅な変更を迫られる。米紙ウォールストリート・ジャーナルは、こう指摘した。
「入学審査の担当者は、マイノリティーの志願者を機械的に優遇できなくなり、学業成績やスポーツなどの課外活動、卒業生や寄付者の意向といった選考基準の中で、人種的多様性をどう位置付けるかを決める必要がある」
■見直し迫られる社会
しかし、裕福な家庭の出身ではないマイノリティーが課外活動に精を出し、卒業生・寄付者の意向などで考慮されるのは極めて難しい。
判決の影響は大学にとどまらず、企業や公的機関にも及ぶ。米国では、優れたリーダーや幹部を多様性によって確保し、組織の利益を生み、社会に貢献するため、企業や公的機関でもアファーマティブ・アクションのような措置が取られてきた。今後はその見直しが迫られる。
■大統領も判決を批判
また、最高裁は6月30日、同性婚カップルに依頼されたウェブサイト制作のサービス提供を、拒否できるとする判決を下した。憲法修正第1条の「表現の自由」に基づいた判断で、拒否を訴えていた西部コロラド州のウェブデザイナー、ロリー・スミスさんの主張を支持した。
キリスト教福音派でウェブデザイン会社を経営するスミスさんは2016年、訴訟を起こした。同性婚カップルにサービスを依頼されたものの、州の差別禁止法の適用を免れられるように求めていた。しかし、同州の連邦裁判所は、性的指向にかかわらず顧客を平等に扱うことを義務づける州法を退けるような憲法上の権利はないと判断していた。
これに対し、保守派のゴーサッチ最高裁判事は、原告の憲法修正第1条に基づく表現の自由は、「同性婚を支持する表現をしない権利」と判断。性的指向による差別を禁じる州法より優先されると述べた。リベラル派判事ら3人は、原告の表現が問題ではなく、行動が争点となるとして反対した。
バイデン大統領も判決を批判した。
「米国では自分が誰なのか、誰を愛しているのかという理由だけで、差別を受けるようなことがあってはならない」
とし、判決が差別につながる恐れがあるとした。