28年ぶりに舌戦を繰り広げた上沼恵美子(写真左)と古舘伊知郎
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 芸能界では、大物芸能人同士の久しぶりの共演はそれだけで価値がある。何らかの「因縁」や「確執」があると噂されている場合はなおさらだ。とんねるずとダウンタウン、松本人志と太田光、中居正広と香取慎吾。これまでに数々の歴史的共演が世間を騒がせてきた。

【写真】並々ならぬ緊張感の上沼恵美子と古舘伊知郎の共演の瞬間!

 しかし、ほとんどの場合、こういった「夢の共演」では、2人が同じステージに立つという事実そのものに大きな価値があるため、そこで具体的な内容のある会話ややり取りが交わされることはあまりない。

 そもそもレジェンド級の芸能人というのは、それぞれが一国一城の主であるため、いざ共演してみると歯車が噛み合わず、人々が期待するほどには盛り上がらず、「両雄並び立たず」という展開になることも多い。

 しかし、最近あった1つの共演劇は、間違いなく最高のエンターテインメントだった。両雄の名は、上沼恵美子と古舘伊知郎。1994・1995年に2年連続で共に『NHK紅白歌合戦』の司会を務めた伝説のおしゃべりコンビである。話術の達人として知られる2人の『紅白』での共演は「世紀の舌戦」と呼ばれた。

 しかし、彼らはそのとき以来、一度も共演することがなく、顔を合わせる機会もなかった。そして、上沼は『紅白』で司会を務めたときのことを苦い思い出としてたびたび語っていた。その中で古舘に関しても「感じが悪かった」とこぼしていた。

 それを受けて、2022年3月には古舘伊知郎が自身のYouTubeチャンネルで公開した動画の中で、上沼との『紅白』を振り返り、反省の弁を述べていた。

 そんな確執が噂されていた2人が、28年ぶりにお互いのYouTubeチャンネルで共演を果たすことになった。動画2本にわたって公開された対談の長さは90分超。話芸の達人同士が息もつかせぬ言葉の応酬を繰り広げた。

 個人的には「とにかくすごかったので見てほしい」とだけ書いて、ここで原稿を終えたい気持ちに駆られている。そのぐらいすさまじいものを見た。大物同士の共演にありがちな、探り合い、褒め合い、譲り合いの空気は一切なし。表面上は穏やかに、しかし譲らないところは絶対に譲らず、「世紀の舌戦」を展開していた。

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