ヤクルト・山野太一(写真提供・東京ヤクルトスワローズ)
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 今年のペナントレースも前半戦が終了したが、セ・パ両リーグとも上位と下位の差は大きく開いており、既に優勝が絶望的なチームも少なくない。そんな下位に沈むチームで今後重要になるのが来季への切り替えではないだろうか。オフにはもちろん補強にも動く必要はあるが、既存戦力の掘り起こしも当然必要になってくる。そんな後半戦に抜擢を期待したい若手を探ってみたいと思う。

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 まずセ・リーグで最下位に沈む中日は長打力不足が叫ばれることが多いが、現役ドラフトで獲得した細川成也、怪我から復帰した石川昂弥の2人にメドが立ったのは大きなプラス材料だ。一方で気になるのが投手陣であり、先発の柱となった小笠原慎之介、クローザーのマルティネスが今後メジャー移籍という話になれば、一気に弱体化することが懸念される。そういう意味でも高橋宏斗に次ぐ若手の台頭が望まれるが、その筆頭候補として期待したいのがドラフト1位ルーキーの仲地礼亜だ。

 開幕当初は二軍でも打ち込まれる試合が多かったが、徐々に調子を上げてここまでチームトップタイの3勝をマークしている。150キロに迫るストレートと、斜めに鋭く変化するスライダーは一級品で、プロ入り後はツーシームもマスターしている。一軍デビューとなった5月13日のヤクルト戦ではいきなり村上宗隆にツーランを浴び、わき腹を痛めてわずか1回で降板となったが、現在は順調に回復。18日のフレッシュオールスターでも1回を無失点と好投を見せた。わき腹の故障は癖になりやすいだけに無理はもちろん禁物だが、このまま問題なく投げられる状態が続くようであれば、再び一軍で先発起用してもらいたい投手である。

 中日以上に投手陣が大きな課題となっているヤクルトで期待したいのが3年目の山野太一だ。2020年のドラフト2位で入団したものの、故障もあって昨年オフには育成選手として再契約となった。それをきっかけにテイクバックの動きを小さくするフォームに取り組んだことが奏功し、今年は制球力が大幅に向上。ここまで二軍で10試合、47回1/3を投げて防御率1.52という見事な成績を残し、今月14日に支配下登録復帰を勝ち取った。大学時代からサウスポーらしいボールの角度には定評があり、仙台六大学野球では4年間で22勝0敗と圧倒的な成績を残すなど試合を作る能力は高い。現在の先発ローテーションはサイスニード、ピーターズの外国人に頼る部分が大きいだけに、来季以降のことを考えても山野の抜擢は必要不可欠と言えそうだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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パ・リーグで低迷するチームが起用したい若手は?