売りは、「安さと高品質」。公益目的事業ということで販売利益が低く抑えられ、刑務作業だからこそのメイドインジャパンの安心感や、手作業の温もりがある。各刑務所には、木工や洋裁などの専門技術を持った「作業専門官」と呼ばれる職員がおり、受刑者への技術指導や商品企画を担っている。
CAPIC製品は、協会のオンラインショップや、全国の刑務所に併設されている展示場などで買える。客層について、櫻井さんは、「値段の安さや使い心地を気に入ってくださったリピーターが多いですが、売り上げの一部が犯罪被害者支援に使われていることに意義を感じて買ってくれる人もいます」と話す。
■刑務所ではこんなものまで作られている!
だが同協会によると、CAPICブランドで販売されている商品は、実は刑務所で作られている製品の約25%でしかない。残りの75%は企業からの発注品だというが、一体どんなものが作られているのだろうか。
法務省職員として刑務所で勤務した経験をもつ、浜井浩一・龍谷大学教授(犯罪学)に話を聞くと、「たとえば……」と次々に例を挙げてくれた。
「電気製品のコードや、市販の弁当に入っている総菜の小分けカップ、ブランドものの紙袋などを作ったり、神社仏閣関連の依頼に応えたり。閉鎖された環境を生かして、秘匿性が必要な作業も請け負っていますよ。資格試験の問題の印刷なんて、大変です。試験が終わるまでに出所する受刑者や、身内や友人に受験する人がいる職員は絶対携わってはいけないし、現場の巡回も所長など決められた者しかできません」
刑務作業に給与が発生することはないが、受刑者のモチベーションを上げるために、「作業報奨金」が支払われる。週に40時間働いて、1カ月の平均支給額は約4500円。浜井教授によると、高齢や病気によりほとんど働けない人は2000円程度、難しい作業や多くの仕事をこなせる人は8000円程度と、働きぶりに応じて値段は変わる。有能な受刑者は刑務所同士で取り合いになるそうだ。