そんな朝市を去る前に、最後にブルーベリーでも買って帰ろうと財布の中の小銭をがちゃがちゃ探し、女友だちと朝食代の細かな精算を100円単位でしていたら、「女勘定だね~」と地元の人に笑われた。細かな精算をチマチマすることを「女勘定」とここらあたりでは言うらしい。日常で使われる言葉一つひとつに、「女」が貶められているんだなぁとしみじみしながら、「はい、女はしっかり計算するので」と笑いながら返せるくらいには私も年を取ったのだと思う。
田舎だから、というのではなく、こういう日常は都心でもあることだ。日本全国どこに行っても逃れられない性差別をベースにした男のエロと男の癒やしの文化が、この国のスタンダードになっていたりするのだろうか。だとしたら旅をするにも覚悟が必要になるよね……という話を3連休後に友人にしたら、彼女が行った旅先の「私が出会った男たち」の話をしてくれた。こんな話だ。
まず空港に降り立ち1人でタクシー待ちをしていたところすぐに中年男性にナンパされた。無視すると、彼女の前に並んでいた女性に声をかけはじめた。迷惑しているのがわかるので背後から「やめてください」と注意すると、「はぁ?」といった調子で絡んできたという。彼女の背後には入れ墨の入った若い男がいたのだが、何かあったら助けてくれるかと思いきや、終始ニヤニヤと彼女と男のやりとりを見ていたそうだ。その後、友人と合流して高級割烹へ。そこで、地元の金持ちらしき40代半ばぐらいの男たちがずーっと風俗の話をしているのを聞かされたという。男たちは、「喧嘩と女、どっちが楽しいかな」とニヤニヤしながら盛りあがっていたそうだ。期待していた高級割烹で、そんな会話が耳に入ってしまう確率が高いのが、ジャパン2023なのか……と、ふらふらになりながらホテルに着いてフロントのソファに身を沈めていると、若い子連れ夫婦がやってきたのだが、驚いたことに男が迷いなく、ズドンとソファに座り(彼女のお尻が浮くほど勢いよく)、妻が赤ん坊を抱いたまま立っている。え? と思った彼女が妻のほうに「こちらどうぞ」と席を立つと、男が「いいんで!」と制したという。事情があるのかもしれないが、意味がわからない。そもそもなぜお前が口を出してくる? と東京に帰ってきた後もずーっとモヤモヤしているのだという。