AERAの連載「はたらく夫婦カンケイ」では、ある共働き夫婦の出会いから結婚までの道のり、結婚後の家計や家事分担など、それぞれの視点から見た夫婦の関係を紹介します。AERA 2023年7月24日号では、精神保健福祉士・カウンセラーの金菱可奈さん、関西学院大学社会学部・教授の金菱清さん夫婦について取り上げました。
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夫40歳、妻29歳で結婚。長女(2)と3人暮らし。
【出会いは?】妻が働くテレビ局主催の東日本大震災シンポジウムに夫が招かれ、スタッフと講師として出会う。
【結婚までの道のりは?】シンポジウムとその後の慰労会で話したあと、夫が妻にメールを送る。夫が災害社会学の教授、妻が働きながら大学院で臨床心理学を学んでいたことから話す機会が増え、東京と仙台でデートを重ねる。約2年の遠距離恋愛を経て結婚。
【家事や家計の分担は?】基本的な生活費は夫。家事は時間に余裕があるほうが担当。子育ては新型コロナの影響で親や地域のサポートに頼りにくくなり、夫婦で乗り越えることが増えた。
妻 金菱可奈[37]精神保健福祉士・カウンセラー
かねびし・かな◆1986年、岩手県生まれ。2008年、日本大学芸術学部写真学科卒業、フジテレビジョン入社。15年、退社。16年、武蔵野大学通信教育部大学院人間学研究科修了。18年、東北福祉大学通信教育部社会福祉学科卒業。現在はリカレントメンタルヘルススクール専任講師も務める
夫と出会ったとき、私は将来に迷っていました。映像ドキュメンタリーの仕事がしたくてテレビ局に入社しましたが、仙台市の実家に帰っていたとき、東日本大震災に遭遇してしまったんです。報道の人間として取材をしなければならない一方で、私も実家の家族も被災した当事者です。被災者の気持ちが痛いほどわかるだけに、マイクを向けるのがつらく、「自分の能力を超えている」と感じました。被災地を取材した同僚や上司が、心的外傷から心身共に崩れていく姿を目の当たりにしたことも、大学院で心理学を学ぶきっかけになりました。
夫は被災者一人ひとりの声に耳を傾けることを大切にしています。私の話も「うん、うん」とよく聞いてくれました。その受容の姿勢には、今も助けられています。
ただ、表情があまり変わらないので、感情が読み取りにくいんですよね(笑)。最初は戸惑いましたが、今はわかりますし、とくに娘が生まれてからは、彼も変わってきているなぁと感じています。