6月だけで15本のホームランを放った大谷。前半戦終了時点で32本塁打と2位に6本差をつけてトップを独走中だ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
6月だけで15本のホームランを放った大谷。前半戦終了時点で32本塁打と2位に6本差をつけてトップを独走中だ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
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 誰も成し遂げたことのない“二刀流”に挑み続ける大谷翔平選手。今年はWBCで世界一をつかみ、シーズンに入っても投打に躍動している。異次元に活躍する彼の原点は何か。大谷選手が15歳の頃から取材し続けるスポーツライター・佐々木亨氏が綴った。AERA 2023年7月24日号の記事を紹介する。

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 熱量をたっぷりと含んだ赤茶色の土が付着するユニフォーム姿で、マウンドに立つ大谷翔平は世界一を迎えた。今年3月に行われた第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のフィナーレの瞬間だ。こみ上げる感情を抑えることなく、内なる思いをさらけ出して歓喜を味わう大谷が、そこにはいた。

 レギュラーシーズンに入っても、野球への熱と異次元のパフォーマンスは変わらない。前半戦を終えて89試合に出場。わずか2試合の欠場のみで、投手としては規定投球回数に達して7勝し、リーグ3位の132奪三振。打者としても、打率は3割台に乗せ、両リーグトップ独走の32本塁打、リーグ2位の71打点と三冠王も視野に入れる。すでにメジャー史上初となる3年連続の「20本塁打&100奪三振」を記録するなど、まさに破竹の勢いだ。その姿に、常に進化を求める野球人としての大谷の本質を見た。同時に、彼の「生き方」が垣間見えた。

 大谷の人間性は、生まれ育った岩手県の風土や気質と無関係ではないような気がする。

「翔平」は、岩手の奥州平泉にゆかりのある源義経にちなんで「翔」の字を、そして平泉の地名と、平穏で自然と生きてほしいという両親の願いから「平」の字を使って名づけられた。

 大谷は、マイペースだ。いい意味で「計算していない」ところがある。野球の技術面は常に高みを目指し、もっとも効率のいい答えを求める、いわば最善の方法を探るのだろうが、彼の生き方としては、計算して物事を判断するのではなく、体の奥底から湧き出てくるものに純粋に従う。ある意味、自然体で生きているように思えるのだ。本能の赴くままに、「寝たい」と思えば、しっかりと睡眠時間を確保する。そんな姿が、伸びやかでおおらかな性格に映る。その感覚や感性は、幼少期から過ごした岩手の環境で育まれてきたものと言えるのかもしれない。

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