番組でryuchellさんは、
「大切な命なのに守りたいのに守れない。『辛い』とか『悲しい』とか、そんな言葉がすごく軽々しく聞こえるようなぐらい、本当に言葉では言い表せないくらいの、人間なのに人が人でなくなるのが戦争」
と語っていた。
番組を見た竹下さんは、この時のryuchellさんの様子について、
「目の前のインタビューアー(=インタビューをする人)は、テーマに興味があってryuchellさんに話を聴いている。でも、それに答えているryuchellさんの言葉は、番組をたまたま目にするような、そのテーマに馴染みがない人が読んだり聞いたりしてもわかりやすいように工夫されている」
と感じたという。
「対話以外でも一つひとつの仕事が本当に丁寧で、スタッフのかたも含めて気配りをされる人でした。現場のスタッフさんがどういう気持ちで動いているのか、をしっかりと見て仕事をされていました。そして、さまざまな人の声が聞こえる耳を持っていました。そういった姿勢そのものが、ryuchellさんが持つ”多様性”を表していたと思います」
●「傷ついた人は他にもいる」
ryuchellさんは、世間でのいわゆる父親像と自身の性自認との葛藤に悩んでいた。2022年には妻のpeco(ぺこ)さんと婚姻関係を解消している。
同年にAbemaTVで放送された番組でryuchellさんは、
「僕は小さいころから男の子だけどかわいいものが大好きで、例えば水を飲む時にも小指が立っちゃうし、何をしてもからかわれることが多かったんですよね」
などと語り、
「性別も年齢も関係ないと思う。こういった意見の人もいるよってことをわかってほしいよね」
と訴えた。
この点について竹下さんは、先に述べた「言葉の二重性」の話を踏まえ、
「ryuchellさんが婚姻関係を解消した当時、SNSでは『父親として無責任だ』とか、それ以外のひどい言葉をも発する人がいました。そうした言葉は、ryuchellさんだけでなく、ryuchellさんと同じ悩みを抱えている人も読むわけです。傷ついた人が他にもいるのではないでしょうか。ryuchellさんが、その場にいない人を考えて話していた、というのはこういうことを考えていたのだと思います」
と語った。

(AERA dot.編集部 板垣聡旨)