東海大相模・原俊介監督
東海大相模・原俊介監督
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 甲子園出場を目指す戦いが本格化する時期となったが、近年は高校野球の世界でもあらゆる変化が起きている。そのうちの一つが強豪と言われるチームの監督交代だ。過去10年の間に高嶋仁(智弁和歌山)、渡辺元智(横浜)、前田三夫(帝京)、小倉全由(日大三)と甲子園通算勝利数トップ10のうち4人の監督が退任。他でも多くの高校で監督が交代している。プロ野球は選手、高校野球は監督がチームの歴史を作るという格言もあるが、果たして監督交代が起こったチームは強さを維持することができているのだろうか。

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 まず強さの維持どころか加速している例としては仙台育英が当てはまるだろう。2017年12月に部員の不祥事によって、甲子園準優勝2回の実績を残した佐々木順一朗監督(現・学法石川監督)が退任。翌年からは系列の仙台育英秀光中学の指揮を執っていた須江航監督が就任することとなった。須江監督となって甲子園初出場となった2018年夏は初戦で浦和学院を相手に0対9と大敗を喫したものの、その後は常に上位に進出。そして昨年夏は東北勢の悲願と言われた甲子園優勝を成し遂げて見せたのだ。

 あらゆるデータや実戦の結果などで部内の競争を活性化させ、投手も野手も選手層の厚さは王者と言われる大阪桐蔭に引けを取らない。今年春のセンバツは準々決勝で延長タイブレークの末に報徳学園に敗れたが、昨年の優勝を経験したメンバーが多く残っており、この夏も甲子園出場となれば優勝候補の一角となることは間違いない。2005年の駒大苫小牧以来となる夏の甲子園連覇も十分に期待できるだろう。

 仙台育英よりも前に結果を残したのが智弁和歌山の中谷仁監督だ。自身も選手として1997年夏に甲子園優勝を経験し、その年のドラフト1位で阪神に入団。しかしプロ野球では不運な怪我もあって結果を残すことができず、若くして指導者に転身した。2018年夏の甲子園後に高嶋監督から指揮官の座を引き継ぐと、翌年は春夏とも甲子園で2勝をマーク。そして監督として3度目の出場となった2021年夏には見事21年ぶりとなる甲子園優勝を果たした。また甲子園優勝だけでなく2019年には黒川史陽(楽天)と東妻純平(DeNA)、2020年には細川凌平(日本ハム)と小林樹斗(広島)とプロへも多く選手を輩出しているのも見事だ。ただ直近で出場した昨年夏と今年春の甲子園ではいずれも初戦で敗れ、今夏は地方大会でまさかの初戦敗退を喫している。改めて勝ち続けることの難しさも感じられるのも確かだ。今後どこまで巻き返してくるかに注目したい。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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監督交代で“復活の兆し”ある強豪は?