『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』に出演しているとんねるずの石橋貴明
『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』に出演しているとんねるずの石橋貴明
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 7月8日、『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ)が放送された。石橋貴明、アンタッチャブルらが見守る中で、数多くの芸人たちが鋭い切り口のモノマネを披露していた。

【写真】細かすぎてで「児玉清」モノマネといえばこの人!

 この番組のルーツは『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ)で2004年に始まった「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」という企画だった。その番組が終了してからも、この企画だけは特番として生き残り、たびたび放送されてきた。そこまで根強く支持される理由はどこにあるのだろうか。

 そもそもモノマネ芸はテレビの世界で不動の人気を誇っている。『ものまね王座決定戦』(フジテレビ)をはじめとして、モノマネ番組には長い歴史を持つものが多く、モノマネというジャンルでは毎年のように新しいスターが生まれている。

「細かすぎて伝わらないモノマネ」は、モノマネという芸を今までとは違った切り口で見せる画期的な企画だった。そもそもモノマネがなぜ多くの人にウケやすいのかというと、真似される対象が有名だからだ。

 たとえば「和田アキ子のモノマネ」は、和田アキ子というタレントを知っている人なら誰でも理解することができる。だから、芸を披露する前に余分な説明や前振りが要らない。これがモノマネという芸の優れているところだ。

 しかし、「細かすぎて伝わらないモノマネ」では、あえてメジャーではないものをモノマネの題材とすることもある。また、たとえ有名人を扱う場合であっても、今までになかった新しい切り口でネタが作られていることが多い。この手のネタはそれまでにも「マニアックモノマネ」などと呼ばれていて、モノマネの1つのジャンルではあったが、主流ではなかった。

 マイナーな題材でモノマネを披露して、それを多くの人に理解させて、笑いを生み出すのは簡単なことではない。しかし、この企画では、いくつかの工夫によってそれを見事に実現させている。

 まず、舞台に登場したパフォーマーが自分自身でこれから披露するネタのタイトルを述べる。タイトルは「○○しているときの○○」のように説明的なものが多く、かなり長文になることもある。題材がマニアックであればあるほど、この説明は長くなる傾向があり、その時点で「そんなところに目をつけたのか!」という驚き混じりの軽い笑いが起こったりすることもある。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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