ここまでなら、たまに見られる交代劇なのだが、話はまだ終わらなかった。
4対1と津久見リードで迎えた6回途中、3人目の背番号10の左腕・寺井健介がマウンドに上がると、捕手も背番号14の藤原裕次郎に交代。なんと、3人の投手全員が別々の捕手とバッテリーを組むという珍事に。
このユニークとも言うべき起用法について、大津裕也監督は「ウチは大黒柱がいないので、継投でいくしかない。短いイニングでも責任を持たせたかった。ふだんから決められたコンビで練習し、気心知れた仲で、工夫して成長して、競わせてるんです」と説明した。久保田も「いつも練習から一緒だし、捕手を信頼できるので投げやすい」と“専属捕手効果”をアピールした。
試合もトリプルバッテリーリレーと足技を多用した攻撃がかみ合い、7回コールドの8対1と快勝。大津監督も「これ以上ない好発進」と満足そうだった。
公式戦で1本も本塁打を打ったことのない選手が、2打席連続ランニングホームランを記録する快挙が生まれたのが、1991年の埼玉大会1回戦、騎西vs県越生だ。
騎西の主将で3番を打つ長野由規は、5回無死二塁のチャンスに、「右を狙え」という井上隆夫監督の指示どおり、庄司忠弘の3球目、高めカーブを右方向に思いきりおっつけると、打球は右翼手の頭上を越えていった。
166センチ、65キロと小柄ながら、チーム一の俊足の長野は、二塁を回って三塁に向かう途中、「もしかしたら、ホームで刺されるんじゃないか」と思い、止まるべきか一瞬迷ったが、「三塁コーチが手を振っているのが見えたので、そのまま突っ込んだ」と一挙本塁を陥れ、公式戦初本塁打のランニング2ランとなった。
さらにその余韻も覚めやらぬ6回の次打席、長野が真ん中直球を叩くと、再び右翼手の頭上を越える長打コースになった。ふつうなら三塁打だが、ここでも自慢の俊足が生き、なんと、2打席連続ランニングホームラン。この日は二塁打も記録し、4打数3安打4打点と大暴れだった。