
■本に込めた「エール」
本は、「『自分らしさ』って、そもそも必要なのかな?」「何が『正しい』かなんて、誰がわかるの?」「誰にでも、本当の『居場所』が必ずあるから。」など、社会への叫びや、生きづらさを抱える人へのエールといった30のメッセージで章立てした。完成した本を見たryuchellさんは、「言いたいことは言えた」と、とてもうれしそうだったという。
2021年10月。本が発売されると、若者世代はもちろん、50代や60代の読者からも、「ryuchellの言葉を聞いてハッとした」「こういうふうに生きていいんだ」という声が数多く届いた。
松尾さんは、こう受け止める。
「ryuchellさんは、『人とちがって何がいけないの?』『男らしさとか女らしさって意味があるの?』と、世の中の当たり前をいつも疑っていました。私たちは、誰が作ったのかよく分からない常識に縛られている。『言われてみればたしかに……』という納得や共感が、世代を越えて広がったのだと思います」
■残された、貴重な言葉
訃報は、突然だった。
「こんな世の中で生きていく武器を身につけたと言っていたのに」
「本に綴った言葉は、自らを鼓舞するための言葉だったのだろうか」
「自分は、まだryuchellさんの表の顔しか知らなかったのか」
松尾さんの頭の中には、いくつもの「なぜ?」が浮かんでは、消える。
松尾さんが最後にryuchellさんに会ったのは、昨年12月。近況を尋ねると、「ここ数カ月は落ち込んでいたんですけど、ようやく元気になってきました!」と返ってきた。去年8月に妻のpecoさんとの離婚を発表して以降、SNS上を中心に激しい誹謗中傷にさらされていたのだ。
「最近のryuchellさんは、容姿も以前とは別人のようになって、ようやくなりたい自分になろうと吹っ切れたのかなと思っていたのに。本当に、残念としか言いようがないです……」