13歳のレオとレミは幼なじみの大親友。が、中学校に入学した初日、親密すぎる様子をクラスメートにからかわれたことで、レオはレミにそっけない態度を取ってしまう。やがて2人は大げんかをして──。誰もがどこか思い当たる思春期の揺れや後悔、そして悲劇からの再生を繊細に描いた珠玉作「CLOSE/クロース」。脚本も務めたルーカス・ドン監督に見どころを聞いた。
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前作「Girl/ガール」のあと何を描くべきかを悩み、故郷に戻りました。その小さな村で私はレオとレミのように野原を駆け回っていました。同時に自分が女の子のグループにも男の子のグループにも属していないように感じていたんです。そして集団に属したいと強く願った結果、自分を裏切り、それによって人との関係を壊してしまった。この映画でその瞬間をあらためて見つめたいと考えました。それはいまの自分に明らかにつながる出来事であり、みなさんにもきっと同じような経験があるのでは、と思ったからです。
心理学者のニオベ・ウェイが13~18歳の少年100人を対象にした調査『Deep Secrets』にもインスピレーションを受けました。13歳のころは男友達が世界で一番心の許せる大好きな存在だったのに、年月が経つに連れて男友達との親密な関係に悩み出す少年たちの様子を筆者は記録していました。この本で私は親密な友情に苦しんだのが自分だけではないことを理解できました。本作ではそれが悲劇のきっかけとなるのです。
レオとレミの両親は悩みもしますが、子への理解が深い存在として描かれます。これまでの映画では親が子を理解できなかったり、葛藤や誤解、過干渉をしたりする描写が多いと感じてきました。親から子へ、世代から世代へ、継がれるべきではない負の連鎖を壊すことは可能だと私は思っています。実際、私もよい両親に恵まれましたし、私のまわりにもよい親子関係の実例がたくさんありますしね。
アメリカでこの映画を観たある男性が「映画館を出たあとタトゥーショップに行って、親友の名前を腕に刻んだ」と話してくれました。亡くなった親友の名だそうです。みなさんの心にも、何か響くものがあればうれしいです。
(取材/文・中村千晶)
※AERA 2023年7月17日号