こんな調子だから、弟はどんどん野球がうまくなりました。中学2年生にもなると、野球では花形選手が守るショートのレギュラーとして大活躍しました。

 体も超ムキムキで頭もいい、本当に立派です。兄としても誇らしかった。

 しかし、当の私はというと、とてもマネなんてできませんでした。

 どうやっても、ぼくは弟のようにはがんばれない。

 朝は眠くて起きられないし、毎日「めんどくさい」と思いながらぎりぎりに学校にいっていました。

 さらに、対照的なぼくら兄弟は、ことあるごとに比較されてきました。

 がんばれる弟は、みんなからとても褒められます。

 一方で、私はぜんぜん褒められず、どんどんひねくれていきました。そして「自分はダメなやつなんだ」と思うようにすらなりました。

 ついには、「そもそも野球ってなんなんだよ」「ボールなんて投げたら、危ないだろ」なんて、悔しまぎれに悪態をつくようになってしまっていたのです。

■「とにかくがんばれ」という呪いからの解放

 しかし、そんな私が、急に自信をもてるようになりました。

 きっかけは、中高6年間、担任だった先生のこんな言葉でした。

「がんばらなくていいから、結果を出せ」

 後から聞いたところによると、「がんばったんです!」なんてアピールはいらないから、とにかく結果を出して欲しいという意図をどうしても伝えたくて、こんな風にしつこく言っていたらしいです。

 ぼくは、そこから6年間、この言葉に従って生活を送りました。

 先生は宿題もほぼ出さないし、テストも至って普通のものでした。

 ただ、テストの結果が出ると、それをもとに面談をするんです。

「点数を上げなくちゃいけないけど、どうするの?」「いつまでにやるの?」と。

 そこで「がんばります!」なんて言うと怒られます。先生は「そんなこと聞いていない」と言わんばかりです。

 当時の私にとって、これは衝撃でした。

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努力は成功の絶対条件ではない