子どもには逆境に強く、しなやかに育ってほしい──。家庭で逆境力を養うにはどうすればいいのか。昨今の教育では、褒めることが重視されがちだが、叱ることも重要な意味を持つという。AERA 2023年7月17日号の記事を紹介する。
【図表】諸外国の若者と比較した日本の若者が自分自身に満足感を持っている割合はこちら
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家庭では何ができるのか。心理学者の榎本博明さんは言う。
「日本の教育は傷つけない、叱ってはいけない、褒めないといけないの『三つのない』が根強い。まずはそこを変える必要があります」
愚息という言葉があるように、日本には身内を褒めない文化がある。だが、最近は「褒める教育」がよしとされ、子どもを堂々と褒めるようになった。榎本さんは、この流れに警鐘を鳴らす。
「欧米でも子どもを褒めて育てると言われていますが、欧米のように基準に満たない者を切り捨てる社会と違い、日本は優しく保護し、競争が排除された社会なので、ただ褒めるだけだと挫折を経験せずに大人になってしまうんです」
実際、こんなデータもある。国立青少年教育振興機構の調査によると、大人になってからのへこたれない力が最も高かったのは、子ども時代に「親に褒められた経験」「厳しく叱られた経験」の両方が多かった群だった。
調査をした同機構青少年教育研究センター客員研究員で國學院大學人間開発学部子ども支援学科准教授の青木康太朗さんはこう解説する。
「叱られるというのは必ずしもダメなことではありません。親が自分に向き合ってくれていると思えれば、それはプラスになります。また、間違ったことを正してもらうことによって、態度や意識が改まる。それが褒められる経験につながり、へこたれない力や自己肯定感も上がっていく」
一方で、へこたれない力が最も低いのは、褒められた経験も叱られた経験も少ないと回答した人たちだった。