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かわいい子だからこそ、旅をさせたくない──。近年、そんな過保護な親が増えているという。親が子どものことを思うあまり、小さな失敗経験まで奪ってしまうと、子どもの将来に影響を及ぼしかねない。AERA 2023年7月17日号の記事を紹介する。
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「もっと挑戦したらいいのに」
私立高校で働く40代の女性教員は、子どもたちと接するときにそう感じることが増えた。生徒はみんな明るく元気だが、ここ数年、気になることがある。
「受験でも課外活動でも、失敗を避けようとする生徒が多くなった気がするんです」
女性の勤める学校には、難関私大や国公立大を目指す進学コースがある。20人ほどのクラスから5人前後が明治大や青山学院大などのMARCHと呼ばれる大学群に合格。いわゆる進学校には届かないが、志望校を目指して頑張る生徒たちのことが誇らしい。
ただ、もうワンランク上にある早稲田大や慶應義塾大も視野に入れればいいのに、とも感じている。
「偏差値の高い大学がいいと言いたいわけではありません。ただ、以前は生徒のなかで何人かは早慶を目指す子がいました。D判定でも、めげずに勉強し続けた。でも、今は頑張れば受かりそうな子でも、チャレンジ校を避けるようになりました」
受験以外でも、前例のないことを避けたり、一つひとつ教員の確認を取りにきたり。10年ほど前から、そんな生徒が目立ち始めたという。
理由が気になって、女性は卒業生(20)に聞いてみたことがある。すると、こんな答えが返ってきた。
「意識したことはなかったけど、受験に失敗してダメージを受けたくなかったのかも」
この卒業生は、自分のことを「失敗を回避するタイプ」と自己分析。当たって砕けるのはつらいから、恋愛でも自分から絶対に告白しないと決めている。
「今思うと、小さいときから親が先回りする系で口うるさかった。最近もバイトの相談をしたら、飲食は大変だから他のにしたほうがいいと言われて、親が登録している派遣会社を紹介されました。やってみて嫌ならやめればいいじゃんって思うけど、『お母さんの言った通りでしょ』って言われるとシャクだからもういいやって」