生徒一人一人にリストバンド型のウェアラブル端末がつけられている(撮影/米倉昭仁)
生徒一人一人にリストバンド型のウェアラブル端末がつけられている(撮影/米倉昭仁)

 冒頭、教員は10分ほど講義が行うと、課題を出し、生徒たちはノートパソコンを使った個別学習に入った。

 そこで、筆者はとなりの教室に手招きされた。この日は校内研修ということで、大型モニターが置かれ、生徒一人一人のグラフが映し出されている。

 生徒のリストバンドから送信された脈拍のデータは教室の隅に置かれた小さな箱のような機器に送信され、それを特別な計算式に当てはめると、リラックス度と緊張度を示すグラフが描かれる。なので、事前に想像していたような「集中度」が表示されるシステムではない。

 モニターの横に立つ高山さんによると、脈拍間隔の揺らぎは自律神経バランスと非常に密接に関係しているという。

「例えば、同じ脈拍数60の人でも、健常者の脈拍間隔の揺らぎが5~6%変動するのに対して、認知症患者は2%程度と、低下する場合が多い。つまり、感情の動きがずっと少ない。それに着目して私はさまざまな業界を対象に長年メンタル不調の研究をしてきました。適度な緊張とリラックスを繰り返している状態が体にも脳にもいい。そう感じられる授業が学習効果が高い、ということになります」

 課題が簡単すぎるのか、グラフが上の方に張りついている生徒がいる一方、その逆の生徒もいる。

「この子は緊張状態になっています。たぶん、課題が難しすぎて、どう解いたらいいのかいいの分からないのでしょう」

 そう高山さんが言うと、青木校長が続けた。

「このような傾向が何回も続くようであれば、この生徒に対して個別の支援をしてあげなければいけないのかな、と思います。ただ、緊張している原因は、体調不良や人間関係の悩みかもしれない。なので、生徒が授業中、ずっと緊張しているからといって、その教員の教え方のせいとは一概には言えません。このグラフは指標の一つとして使うもの、と考えています」

■W杯サッカー選手との類似点

 リストバンドをつけて授業を受けることについて、子どもたちはどう感じているのか? 授業の後、聞いてみた。

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教室にいる生徒たちの反応は…