AERA 2023年7月17日号より
AERA 2023年7月17日号より

「素早く」と言われても即座には文言が出てこず、返信に一定以上の時間を要してしまう。「既読無視しないで」と言われても、話題が終わったと思っていたり、終わりのない「締めのあいさつ合戦」になったら悪いと思っていたり、次の文言をどう返そうかと長考している最中だったりすることも。


■不可欠なのは「発信力」


 内向型の人はポジティブ圧力にさらされると黙る傾向がある。しかしそれだと、相手には「黙認」と取られかねず、逆効果だ。内向型は「言わなくてもこれぐらいわかるでしょ」と認識しがちだが、「それを想定している相手は内向型ですよね」と関本さんは諭すという。


「内向型の人には沈黙がバリアのように見えるのですが、アグレッシブな人ほどその空気を全く感知できません。発信力をつけることで、逆にバリアを張ることができる、という経験を重ねることが重要です」


 内向型の生存戦略として「発信力」は不可欠なのだ。内向型の人には、深く考えられる強みがある。コツコツ勉強して資格を取るのも得意だ。しかし、見識も資格も外に向けて発信しなければ活用できない。内向型の人は周囲の「ポジティブシンカー」に自分の特性を知ってもらうことが、組織を円滑にする上でも有効と関本さんは言う。


「社交的な人もいれば内向的な人もいて、それぞれが役割分担して世の中のバランスは保たれています。自分と正反対のタイプの味方を見つけてタッグを組めば、ビジネスの成功率も高まるはずです」


(編集部・渡辺豪)


■本誌に寄せられた「ポジティブ圧力」体験談


「常にやる気があるように見せないといけないのがつらかった」(東京都32歳男性・保険会社社員)


「上司がポジティブ思考な人で、何があってもへこたれず、常に自分が正しいという雰囲気を漂わせていて、相手をするのが大変です」(三重県52歳女性・公務員)


「ポジティブな意見より先にネガティブな意見を言ってしまい、提案に反対と誤解されることが多い」(千葉県66歳男性・年金生活者)


「私は用心深い性格で、石橋を叩いて壊して、鉄橋に造り替えてから渡るような仕事の仕方です。それが、評価されていました。ところが、社長が交代して、複業化、今でいうマルチタスクとスピードアップを前面に謳い、仕事の仕方が百八十度変わりました。体育会系のポジティブ集団が台頭するようになりました。仕事しにくく、生きにくくなり、FIREしました」(兵庫県49歳男性・投資家、文筆家)

AERA 2023年7月17日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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