※写真はイメージです(gettyimages)
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 社会ではポジティブが正義とされ、どうしても内向型がネガティブ視されがち。慎重で用心深い内向型の人は、職場で上司や同僚の「ポジティブ圧力」に悩まされ、息苦しさを感じることも少なくないようだ。内向型の人はアグレッシブな人とどう向き合えばいいのか。AERA 2023年7月17日号の記事を紹介する。

【図】「内向型」の人が「ポジティブ圧力」に苦しんだ体験談はこちら


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 アエラは6月下旬、「ポジティブ圧力」や「内向型」に関するアンケートを実施した。「ポジティブ圧力」を感じた経験のある人からは「ママ起業家やマルチ商法に熱心な友人と話す時はいつも感じていました」(埼玉県・49歳女性)、「世の中、『笑顔』でさえあればいいことのように言われていて、時には笑顔を強要されているように感じます」(埼玉県・74歳女性)といった声が寄せられた。


 一方、内向型の利点については、「リスクを洗い出せる」(千葉県・66歳男性)、「熟考できる」(埼玉県・46歳女性)など。


「私自身はかなりポジティブ思考」という都内の商社勤務の女性(48)は「同僚や部下にはネガティブ思考の人も少なからずおり、そういう人たちに助けられている」と吐露。「暴走しそうな時に立ち止まるとか、事前にwhat if(もし起きたらどうするか)を緻密に考え抜くとか。ポジティブ思考の人は意識的にネガティブ思考の人を近くに置くのが良い」と説く。


 内向型の人は職場でどんな悩みを抱えているのか。


「一人でじっくり考えたい内向型は、組織のメインストリームから外されていく傾向があると感じます」。こう話すのは、東京カウンセリングオフィス所長で臨床心理士・公認心理師の関本文博さん(38)だ。


関本文博(せきもと・ふみひろ)/臨床心理士・公認心理師。精神科・心療内科クリニック勤務を経て2021年に東京カウンセリングオフィスを開業(写真:本人提供)
関本文博(せきもと・ふみひろ)/臨床心理士・公認心理師。精神科・心療内科クリニック勤務を経て2021年に東京カウンセリングオフィスを開業(写真:本人提供)

 関本さんの相談所には、上司や同僚の「ポジティブ圧力」に苦しむ30~40代の内向型のビジネスパーソンの来所が後を絶たない。例えば、失敗の責任をなすりつけてくる上司がいても、「他責にしていたら、あなた自身が成長できないよ」と言われてしまう。そんな空気を敏感に察し、どこにも愚痴をこぼせずモヤモヤが蓄積されていく。「ネガティブ」な要素を過剰に排除する社風は、いまだに「学閥」が残る有名企業や官庁ほど色濃い、と関本さんは指摘する。


 SNSは内向型の特徴が可視化されやすい面もあるという。


「LINEやメール、チャットといったテキストメッセージのやりとりをする際にも、内向的な人はじっくり時間をかけて文面を考える傾向にあります。素早く手軽なメッセージのやりとりを楽しみたい、と考えている人とは、そういったやりとりに対する向き合い方から異なる場合があります」(関本さん)

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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