28ページの企画書のうち、人力が半分、あとの半分は、元の文章を私が用意し、「商業出版のノンフィクション風に英訳してほしい」などの対話をChatGPT 4としてつくりあげていった。(撮影 写真映像部・佐藤創紀)
28ページの企画書のうち、人力が半分、あとの半分は、元の文章を私が用意し、「商業出版のノンフィクション風に英訳してほしい」などの対話をChatGPT 4としてつくりあげていった。(撮影 写真映像部・佐藤創紀)

 2021年の単行本出版の段階では、アミロイドβというタンパク質を標的とした抗体薬が、まだ承認をされていなかった。自分としてはこれが研究の本筋としてその30年の歴史を書いたのだが、版権は、アジア圏では売れたものの、欧米圏では売れなかった。

 だが、リターンマッチの時がきたのである。

 単行本出版以降、エーザイの「レカネマブ」という抗体薬が治験で決定的な結果をだし、この7月6日にアメリカで承認をされ、日本や欧州でも承認される見込みになってきた。

 単行本出版以降の出来事を書きおろした新章を加えた文庫版を8月末に出すことにし、400字×80枚を新たに加筆した。

 この文庫版を海外でまた売り出せばいい。しかし、外部の人を頼って新しい英文のプロポーザルをつくるには、予算がない。そこで、試しにChatGPTを使ってみたのである。

 最初のイントロダクションの章は、自分でふうふう言いながら6時間ほどかけて英文を書いた。それを「これをネイティブチェックしてくれ」とChatGPTに命令した。

 驚いた。

 Susumu Shimoyama followed this theme in last twenty years and interviewed every important persons who were involved with important breakthroughs and also failures.

 という文章が、こんな感じのこなれた文章になって一瞬で出てくる。

 Over the course of the past twenty years,Susumu Shimoyama has pursued this theme,conducting interviews with key individuals involved in significant breakthroughs as well as failures.

 おう。よくわかってるじゃないの。

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