以来ずっと海外で興行を続けてらっしゃるのも、本当にすごい。才能なんかないと謙遜するが、目標を定め、たどり着くにはどうしたらいいのか分析し、達成していく。その判断力と計算と実行力は凄(すさ)まじい。


 受験の話に戻るが、万由子さんは論文の後期試験なら受かるかもと狙いを絞り、見事仕留めた。我々などは、こうなりたいな、というのがあっても漠然としていたりして、そこへ行く道など見つからないのだ。


 じゃあ、そのゴールがはっきりしていたとする。それでもそこにたどり着く道がはっきりしなくて途方に暮れる、やけになる、自信がなくなる、つまり自分を信じられなくなる。


 万由子さんがそばにいたら……と、どんなアーティストもおそらく思うのではないだろうか。自分にそういう才能が少しでもあればなあと。


 だってなにより明るい。苦労ももちろん多いと思うけれど、持ち前の明るさで、あっけらかんと自分の望みをかなえていく、この清々しさよ。


 でもきっと弱い万由子さんもいるのかなあとも思ったりもした。目標を定めないで、よくわかんなーいと、縁側でぶらぶら足をばたつかせてごろごろするような万由子さんもいるのではないかと。そういう、誰のためでもなく、猪突猛進(ちょとつもうしん)でもなく、ただ漂う時間もあってほしいとなんだか友人のようにそう思った。


大宮エリー(おおみや・えりー)/1975年、大阪府出身。99年、東京大学薬学部卒業。脚本家、演出家などを経て画家として活躍。瀬戸内国際芸術祭(岡山県・犬島)で「光と内省のフラワーベンチ」を展示。2023年7月11~24日にスパイラルガーデン(東京)で個展を控えている


高田万由子(たかた・まゆこ)/1971年、東京都出身。東京大学在学中に「週刊朝日」女子大生表紙シリーズのモデルに。「たけし・逸見の平成教育委員会」レギュラー出演。94年、東京大学文学部卒業。99年、バイオリニストの葉加瀬太郎さんと結婚。2007年にロンドンに移住

AERA 2023年7月10日号