この記事で日本の人口減少は16.3%で9位にランクしている。興味深いことに1位から8位まではすべて東ヨーロッパの小国で占められている。ブルガリアに次いで2位はリトアニア、以下、ラトビア、ウクライナ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モルドバの順となっている。

 現在、世界第3位の経済大国で人口でも世界11位の日本の人口減少は、特異な現象と言えるだろう。単に特異な現象というより、人類史的に見ても戦争や国家分裂、疫病の蔓延以外で、日本ほどの巨大な国家で極端な人口減少が起こるのは極めてまれだろう。

 人口急減する東欧の国でウクライナ以外の国はすべて1000万人に満たない小国である。なぜ東欧のこうした国々では人口が極端に減るのだろうか?

 それは少子化に加えて、西ヨーロッパに若者が移住していくからに他ならない。ブルガリアは、若者の海外流出のスピードを少しでも遅らせようと必死だ。国内の教育や経済の機会を改善することで、EUやその他の国へ移住するよりも国内にとどまる魅力をアピールしていると言うが、効果は限定的なようだ。

 ヨーロッパのこの状況を見て考えさせられるのは、少子化による人口減少が経済の停滞を招き、それが若者の国外流出を促進するという事実だ。日本は現在、人口減少によって労働者、若者が不足しているが、人口激減が止まらない日本の未来に希望が失われれば、優秀な日本の若者も海外に流出するかもしれない。

 いや、すでにその現象は始まっている。外務省の海外在留邦人数調査統計では、2022年10月1日現在の日本人の海外永住者は55万7000人と過去最高を記録し、10年間で14万人以上、増加した。

 2021年は円安傾向が続いたが、その結果、日本の賃金よりはるかに高いオーストラリア、カナダなどに短期、長期で働く日本の若者が増えている。

 若い女性では海外流出が顕著なようだ。大学生の留学では短期・長期を含め女子学生が圧倒的に多いが、女子学生は卒業時に外資系企業に採用されないと分かると、迷いなく日本企業より海外の会社を選び国を出ていく傾向があるという。女性活躍推進が叫ばれながらも、国内企業では女性の活躍には壁があると感じていること、また日本の将来への不透明さが海外での就労、日本脱出を決意させるのだろう。

●毛受敏浩(めんじゅ・としひろ)
1954年徳島県生まれ。慶應義塾大学法学部卒、米エバグリーン州立大学公共政策大学院修士。兵庫県庁に入職後、日本国際交流センターに勤務し、現在、執行理事。文化庁文化審議会委員。著書に『人口激減─移民は日本に必要である』(新潮新書)、『自治体がひらく日本の移民政策』(明石書店)、『限界国家─人口減少で日本が迫られる最終選択』(朝日新書)など。

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