昨年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件で、殺人罪などで起訴された山上徹也被告の第1回公判前整理手続きが奈良地裁で6月12日に予定されていた。しかし、山上被告宛てに送られてきた段ボールが危険物の疑いがあるとして、裁判所の職員らが緊急避難する騒ぎに。そんなとき、裁判所の芝生に数匹のシカが。え、裁判所ってシカが入ってもいいの?
6月12日午後、奈良地裁前は騒然としていた。
この日は、山上被告の第1回公判前整理手続きが予定されていた。山上被告自身も裁判所に来るとの意向を示していたので、注目を集めていた。
午後2時過ぎごろ、裁判所に到着したところ、警察官が「危険だから離れて」と大きな声をあげていた。外には裁判所の職員や関係者とみられる人らが多くいた。
話を聞くと、午前11時過ぎに裁判所に宅配便で届いた段ボール箱が金属探知機に反応し、危険物の可能性があるとして緊急的に避難したのだという。奈良県警の爆発物処理班が出動し、裁判所の周囲は警察車両や大量の警官が警備するというものものしい雰囲気となった。その後、段ボール箱が運び出され、警備は解除された。
そんななか、裁判所の敷地内の芝生に1頭のシカが現れた。草をはみはじめると、2頭、3頭と次々にやってくる。警備員や警官もいるが、誰もシカを追い払うことはない。
そう。奈良公園名物のシカたちだ。全国広しといえど、裁判所の入り口付近に当たり前のように動物が入ってきて、芝生で草をはんでいるというのは聞いたことがない。野犬が入ってきて警備員が必死で追い返していたり、裁判所の建物内にハトが飛び込んできて騒ぎになっていたりしたのを見たことはあったが……。
奈良地裁に聞いてみると、
「シカが敷地に入ってくるのを制限してはいません。昔からそうだったようです」
とのこと。
奈良地裁は近鉄奈良駅からほど近い場所にあり、大通りをはさんだ目の前に「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録されている興福寺がある。同じ通り沿いには県庁もあり、この周囲は奈良公園の芝生が広がる観光スポットとなってる。公園は660ヘクタールという広大な地域にまたがっており、東大寺、春日大社、国立博物館、正倉院などが近接している奈良観光の中心だ。