※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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本人はやせたと喜んでいても、陰で「でも老けたよね」と言われたのではあまりにも悲しすぎます。そんな「やせたけど老けて見える現象」は、糖質制限ダイエットで起こりやすいと近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師は感じているそうです。大塚医師が糖質制限やアンチエイジング研究について語ります。

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 アンチエイジングの秘訣は、食べる量を減らすことです。カロリー制限をすれば寿命が延び、見た目も若返ります。目安として、一日に接種するカロリーを30%程度制限すれば良いと言われています。カロリー制限を行うことで、健康寿命が延びる可能性もあります。

 さて、以上の話を聞いて「よし、明日から糖質制限ダイエットを始めよう」と思った人は、注意が必要です。ぜひ最後まで読んでください。

 これまで、カロリー制限によるアンチエイジングの研究の多くは線虫やネズミを使ったものでした。動物実験では研究が進んでおり、カロリー制限がアンチエイジングに有効とのデータが多く報告されています。そのメカニズムも詳細にわかってきており、mTOR(エムトール)という分子の関与が指摘されています。

 mTORは、細胞の栄養状態を感知し、蛋白(たんぱく)合成、細胞増殖、血管新生、免疫などのさまざまな細胞機能を制御する分子で、細胞外の栄養状態や細胞内のエネルギー情報を感知し、細胞成長と増殖を促進する役割を果たしています。このmTORをブロックする薬は、抗がん剤の分野ですでに使用されており、mTOR阻害剤であるラパマイシンがアンチエイジングの治療薬として使えるのではないか、と多くの研究者が考えています。

 では、線虫やネズミではなく、人などの哺乳類ではどうでしょうか。残念ながら、人においてカロリー制限が、寿命を延ばすかどうかはまだ決着がついていない状況です。

 同じ哺乳類のサルでは、1カ月目にカロリーを10%制限、2カ月目に20%制限、3カ月目以降は30%のカロリー制限をした場合に寿命が延びたという研究報告があります(文献1)。このカロリー制限をしたサルは寿命が延びただけでなく、見た目も若返っていました。この、哺乳類でもカロリー制限がアンチエイジングに有効とするデータは世界を驚かせました。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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しかし数年後、反対の結果が報告