しかし数年後、反対の結果が報告されます。つまり、カロリー制限はサルの寿命を延ばさなかったという論文です(文献2)。これら二つの研究が示すことは、カロリー制限はアンチエイジングに有効かもしれない、ただし、そのやり方には何らかの工夫が必要ということです。なんでもかんでもカロリー制限すればアンチエイジングができるわけではなさそうです。
美容皮膚科の領域でも、アンチエイジングに関する相談を受けることがあります。シミやシワだけでなく、見た目の問題として、中年期以降の太りすぎはやはり老けて見えます。体重が増えれば生活習慣病の合併も多く、当然、健康には良くありません。ですので、若く見えるためには、適正な体重を目指しダイエットをしたほうが良い、というのは、私が言わずともみなさん共通の認識でしょう。
しかし、気をつけてほしい点もあります。ダイエットに夢中になるあまり、不健康にやせすぎてしまう場合です。とくに、年齢とともに、肌のハリがなくなります。やせすぎると、どうしてもシワが目立ち老けて見えます。
この「やせたけど老けて見える現象」は、個人的な意見として、糖質制限ダイエットで起こりやすいと感じています。もう少し言うと、老けて見えるのだけが問題なら良いのですが、過酷な糖質制限ダイエットは健康を損なう危険性があり、医者としては決して推奨できません。糖質制限ダイエットにより、ケトアシドーシスなど体が危険な状態になるリスクがあるからです。
急激なダイエットを行った場合、脂肪は減りますが延びた皮膚はすぐにもとには戻りません。若いうちは目立ちませんが、年をとると、シワやたるみが目立つ肌となります。さらに、肌は乾燥し、カサカサとなるケースをよく見かけます。これだと、「あの人はやせたけれども、老けたよね」と、周りの人の印象がネガティブなものとなります。
ダイエットですぐに結果を出したい気持ちはよくわかります。しかし、中年期以降、急激にやせるのは、かえって老けて見える危険性があることを自覚しておくべきです。「10キロやせた」と本人は喜んでいても、陰で「でも老けたよね」と言われたのではあまりにも悲しすぎます。カロリー制限とアンチエイジングの関係は、まだ謎が多い分野です。それを踏まえたうえで努力するのであれば、少しずつカロリーを制限し、腹八分目もしくは七分目を目指すダイエットが良いでしょう。
文献1:Science. 2009 Jul 10;325(5937):201-4.
文献2:Nature. 2012 Sep 13;489(7415):318-21.