高山に登りたいという目標があるなら、運動を始めよう。2日に一度、できれば毎日、階段や坂道の上り下りを中心にある程度の距離を歩く。こうしたトレーニングをしたうえで、近郊のハイキング、次に低めの里山、やや高い山というように、だんだんと体を慣らしていけば、無理のない計画を立てることができ、高山に挑戦したときの高山病のリスクはグッと少なくなる。

■海外の高地でも高山病を発症

 近年は海外の高地に観光旅行などに出かけて、急性高山病を発症する人も少なくない。海外には、中国の黄龍(約3100~3600m)、ペルーのチチカカ湖(3812m)、ボリビアのウユニ塩湖(約3700m)、フランスのエギーユ・デュ・ド・ミディー展望台(3842m)など、たくさんの高地があり、こうした高地にケーブルカーやロープウェー、バスなどで一気に移動すれば、高山病を発症する危険が高まる。

「たとえば日本から南米旅行するときによく使われるペルーのリマの空港は標高ほぼ0m。ここからマチュピチュの玄関口にあたるクスコ(3400m)に国内線で移動し、1泊すると、高山病にかかってしまう人が多い。中国の青蔵鉄道やチベットでは肺水腫などの高所障害で亡くなる人もいるようです。外務省の海外安全情報にも、『高山病』として注意喚起されています」

 齋藤医師はこう続ける。

「海外の高地であっても、基本的な治療や予防策は同じです。しかし海外は時差もあるし、長時間の飛行機移動、慣れない場所で眠れない、食べ物や水が合わない、医療事情が悪い場所もあるなど、より条件が悪くなる。旅行に向けてしっかりと体調を整え、徐々に高度を上げていくルートを選択する、高地の滞在は短くする、ゆとりのあるスケジュールを組む、医療体制を確認しておくなど、準備を徹底する必要があるでしょう」

 なお、海外の高地を目的地にした旅行のパンフレットには、必ずと言っていいほど高山病予防として「高地に移動する前日や当日朝に予防薬のアセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)を飲む方法もあります」といった記載がある。「必要に応じて服用する」とあり、判断に迷うところだ。

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ダイアモックスは、根本的に高所に強くしてくれるわけではない