方法は明らかに間違えているが、とにかく今井はいじめられっ子から抜け出した。金を使うことで自分の立ち位置を見出すということを覚えた今井は、どんどんエスカレートしていく。

<高校受験のため太陽学院(塾)に通っていましたが、サボってばかりだったので成績は上がりませんでした。そのころ、仲良くなっていた同級生の子に対して、盗撮してもらいたいと言って、その子たちに盗撮させて、その対価としてお金を支払うということをしていたりしました>

 そんな今井は、高校受験に失敗し、横浜市内の私立高校に進学した。高校では人並みの青春を送っていたというが、卒業後に進学した救急救命士の資格が取れる専門学校では再び、金を使って自分の居場所を作るようになっていた。

 さらに中学時代にはなかった「嘘」をつくようになっていた。

<1年生のオリエンテーションにて、私は全国大会(指揮者として)に行ったことがあり、入賞したこともあるとの嘘をついたりしていました。また中学校や高校の吹奏楽部を指導していて、お金をもらっているとも言っていました。学校を終えた後にカラオケに行ったり、ショートゴルフに行ったりしていました。カラオケやボーリングのお金は私が出したり多々していました。金銭感覚はかなり狂っていたと思います>

 嘘で塗りかためられた今井は、この時期、「事件の発端となった」と語る体験をしていた。

<本件のことを語るにあたって専門学校の頃の出来事は大きく影響しているかと思います。救急救命学科なので、心肺蘇生法を繰り返し実習などで行っていたので心肺蘇生法をすることにより、気持ちが高揚したりしていました。救急救命措置をしている自分について、「かっこいい」と思うように至ったのです。中々、言葉にするのがかなり難しいのですが、あえてするのであれば「自分のことを見て欲しい」といった気持ちが強くなっていったのです>

 金の力で、自らの居場所を見つけることを覚えた少年は、青年期になってもありのままの自分をさらけ出すことで友を作るという経験を知らずに育っていた。自尊心を得るために、人の命を奪うことへの抵抗はこの時期から無くなっていたのかもしれない。

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「技術を人に見せつけたいとの思い」