そして犯行を行った時の心境をこうも語っている。

<その自分の持っている技術を人に見せつけたいとの思いから、お二人を転落させてしまいました>

 そして手紙は、犯行の告白、そして上告を取り下げた理由に入っていく。

 本当に3人を殺したのか、そしてなぜ突然上告を取りさげたのか。今井はその疑問全てを記し、私たちには託していたのだ

 今井の意志に沿って、全文を掲載する。

<これまでは本件について「やっていない」といっていましたが、実は私がやったことで間違いないのです。本件の裁判でもそのように主張しています。私がしてしまった件についてはこれから書くとして まずは―なぜ今このタイミングで取り下げに至ったのかについて書いていこうと思います。

今、このタイミングで本件の上告審を途中で取り下げたのは、もう私としても気持ちの限界だったからです。逮捕されて以降、“自分がやった”という記憶がありながら、第一審の弁護団が選任されてからは、まず“黙秘”から始まったので、自分が自分の口で語ることができませんでした。弁護人から連日“黙秘”を進められていたので、そっちに――要は楽の方にいってしまったのです。

そして精神鑑定をやりたかったと感じた私は、公判前整理手続きの途中で健忘の主張をするようになり、その健忘が通用しないとわかると”やっていない”とうそをついたのです。第二審も否認を続けていましたが複雑な気持ちがありました。それは供述心理学鑑定によって第一事件と第三事件は私の体験に基づく供述ではない可能性が高いとの結果が出たことでした。“これならえん罪の主張で突き通せるのではないか”との弱い自分が出てきていました。ずっと嘘の主張を続けていたので、もう第二審の時には慣れてしまっていました。あまり抵抗なく……。

そして現在 上告審中なのですが、昨年12月ごろからずっと悩んできていて、ここにきて新たな供述心理学者も出てきたので、“もうこれ以上は他人を巻き込むのは違うのではないか”“認めるならばここだ”“嘘なく生きたい”との思いがだんだんと強くなってきて、ゴールデンウィーク明けくらいから深く悩むことになりました。そして私としては“自分がしたことだし、もうこれ以上否認をし続けてそのプロセスの中で様々な専門家を巻き込むのは違う(イヤだ)”“嘘はやめよう”との思いが固まって上告を取り下げることにしました。

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「真実を語れなかったことを後悔している」