バーベキューでは着火剤の正しい使い方を知らないと、火災事故の原因になりかねない。写真はイメージ(GettyImages)
バーベキューでは着火剤の正しい使い方を知らないと、火災事故の原因になりかねない。写真はイメージ(GettyImages)

 5月24日、福岡県柳川市でバーベキューをしていた専門学校生の男子学生4人に火が燃え移り、そのうち、18歳の男子学生が死亡するという痛ましい事故が起きた。この事故は専門学校の理事長が炭に消毒用のアルコールを混ぜたことが原因で火が燃え上がったとみられるが、炭に火をつける際に使用する着火剤による事故も後を絶たない。転職エージェント「マイキャリア」代表取締役の兼平竜也さん(36)は昨年8月、バーベキューの準備中に着火剤が爆発。頭に付着した着火剤が燃え上がり、顔に大やけどを負い救急搬送された。着火剤による事故が少しでも減ってほしい。その思いから、悪夢のような体験を語ってくれた。

【閲覧注意】頭のやけどを治療中の包帯姿の兼平さん

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 事故が起こったのは昨年8月。家族でバーベキューを楽しもうと、大阪府豊中市にある「服部緑地」を訪れ、コンロの炭に火をつけた数分後だった。

「机やいすを組み立てて、コンロに行ったら、火が消えているように見えたんです。それで、炭から離れた高い位置から着火剤のジェルを降りかけました」

 すると、かすかにスーッと音がした。最初はどこから音がしているのかわからなかった。耳を澄ますと手に持った着火剤のチューブから音がしていることに気がついた。そのときすでにチューブに引火していたのだ。

「チューブの口を確認しようと、手を傾けた瞬間、爆発した。火がついたジェルが飛び散って、ジェルが付着した髪の毛と顔が燃えました。慌てて火を振り払ったのですが、全然消えない。妻に水筒のお茶を頭からかけてもらい、何とか火を消しました」

 元消防レスキュー隊員の弟(現YouTubeレスキューハウス隊長)から電話でアドバイスを受け、救急車が到着する間、やけどを負った頭部を流水で冷やし続けた。

「子どもたちは泣きじゃくっていました。妻から、もう顔の皮膚がなくなっていると言われた。『結構、重症なんやな』と思った記憶があります」

 やけどによって体温が上昇したことで、新型コロナの疑いが持たれた。それにより、搬送先の病院はなかなか決まらなかった。

「(搬送中も)左目が痛くて、目に火が入ったんかなと思った。そうすると、失明してしまう可能性もある。顔もめっちゃ痛かったです。(救急隊員から)重度のやけどですね、と言われて、命の危機にあるのかなとか、どんどんネガティブになっていきました」

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「着火に手こずる」ことが事故の遠因