ところが、1度でも着火作業をした炭には小さな火種が残っていることが多いという。しかも、それはほとんど目に見えない。火が消えていると思い、炭の上にジェル状の着火剤を絞り出してしまう。

「アルコール系の着火剤は引火性が非常に高いので、その瞬間、パンと爆発的に燃え上がります。さらに、炎が絞り出した着火剤を伝わって手にしたチューブに迫ってくる。当事者は火が消えていると思い込んでいるので非常に驚きます。で、何をするかというと、必死に火を消そうと思ってチューブを振り回す。すると、火がついたジェル状の着火剤が火の玉となって周囲2~3メートルに飛び散る。それが他の人たちの服や顔に付着する。着火剤ですからジュクジュクと燃え続けます」

 楽しいバーベキューが一瞬にして悲惨な事故現場となってしまう。

「つまり、炭の着火に失敗したことが着火剤を再投入につながり、事故が発生するわけです」

■炭を割るという意外なコツ

 では、どのような着火方法が正しいのか。下城会長にコツを教えてもらった。

「まず、ジェル状の着火剤であればそれを塗った炭をグリルの底、炭網に置きます。その上に砕いた炭を山のように積み上げる。そして着火剤に火をつける。これが基本中の基本です。後は何もしなくても火が炭に燃え移っていく。失敗することはほとんどありません」

 事故のほとんどはチューブ入りのアルコール系着火剤で起こっている。なので、「初心者は避けたほうが無難です」。

 チューブ入りではなく、小袋にパックされたアルコール系着火剤もある。こちらは万が一、再投入しても手元に炎が迫ることはないので、比較的安全だという。

 さらに、おがくずや繊維などを固めたものに灯油を染み込ませたタイプや、木片にろうを塗った着火剤もある。

「木質系の着火剤はそれほど引火性が高くないので、よほど極端なことをしなければ事故は起こりません」

 いずれの着火剤も炭の一番下に置くことが非常に重要である。

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炭の大きさは握りこぶし半分くらいに