一般的に保定治療の期間として2年が一つの目安になるそうです。保定期間でも3カ月~半年に1回は通院が必要です。歯列が安定したら、最終的には就寝時だけのリテーナーの装着でよく、通院も半年~1年に1度程度ですむケースがほとんどです。
「もう一つ、気をつけてほしいことがある」と話すのは、日本矯正歯科学会認定医・臨床指導医でみむら矯正歯科院長の三村博歯科医師です。
「歯並びを悪くする『舌の癖』が残っていると、せっかく治した歯並びが、容易に元に戻ってしまいます」
舌で前歯を押す癖があると、開咬(かいこう、奥歯を噛み合わせたときに上下の前歯の間に隙間ができる)や出っ歯(上顎前突[じょうがくぜんとつ])を起こすリスクが高くなりますが、矯正歯科治療後もこの舌の癖が直っていないと、再発してしまうのです。
「舌の癖がある場合は、MFT(oral myofunctional therapy)というトレーニングを歯科医師や歯科衛生士の指導のもとでおこない、舌を正しく使う方法を身につける必要があります」(三村歯科医師)
そのほか、歯ぎしりや食いしばり、口呼吸の癖も、歯並びにはよくありません。
多くの保護者が「歯並びに悪影響を与えるのでは?」と気にする子どもの「指しゃぶり」は、開咬や出っ歯を招くだけでなく、吸引力が強いため、上下の歯列の形態をくずす原因になることもあります。しかし、強引にやめさせるのではなく、あまり神経質にならずに、3歳前後を目安にやめさせるといいでしょう。
■ゴールまで治療を続ける覚悟をもって臨む
「80歳になっても自分の歯を20本以上残して、自分で噛んで食べる生活を送ろう」と提唱する「8020運動」。口腔ケアをしっかりしてむし歯や歯周病を防いで歯の寿命を延ばすというものです。そのためには歯磨きなどのケアがしやすく、口内を良い状態に保ちやすい「きれいな歯並び」が基本になります。実際、8020達成者には反対咬合や開咬の人はいないといわれています。矯正歯科治療は、見た目の美しさだけではなく、老後にまで影響します。大人になってからも矯正歯科治療はできますが、とくにあごや顔面の骨格が歯並びに関係している場合には、子どもの時期からの矯正歯科治療が必要になる可能性が高くなります。