矯正治療中は、装置をつける負担のほかに、月に1回程度の通院が必要です。また、矯正装置が入っているとむし歯になりやすいため念入りな歯磨きが必要なことなどから、子どもにはかなりの負担となります。通院をサボる、歯磨きが不十分などが続くと、歯の移動がうまくいかなくなったり、むし歯が増えたりして、治療が長引く原因に。とくに毎日の口内のケアは重要で、口腔(こうくう)ケアが不十分だったためにむし歯が増えてしまったのでは、なんのための矯正歯科治療かわかりません。日本矯正歯科学会認定医・臨床指導医でのむら矯正歯科院長の野村泰世歯科医師はこう話します。

「子どもに矯正歯科治療を続けさせるポイントは、通院や歯磨きを習慣化させることでしょう。本人の歯科矯正への意欲が薄れてきたと感じたら主治医に相談して、本人、保護者、歯科医師、歯科衛生士で面談をおこない、モチベーションを上げる工夫を相談することも少なくありません」

 それでも続かず、途中でやめてしまったらどうなるのでしょうか。矯正を中断された歯は、元の状態に戻るだけでなく、新たに噛み合わせの異常が生じるなどで、さらに悪化することもあります。やむを得ない事情で中断を希望する場合には、主治医とよく話し合うことをおすすめします。

■「保定治療」で歯並びを安定させる

 歯並びが改善されて、いよいよ矯正装置を外す時期がきても、まだゴールとはいえません。装置を外したあとの「保定治療」が大切なのです。保定治療は元の歯並びに戻ってしまわないようにおこなう治療で、とくに矯正装置を外した直後は歯並びが安定しないため、保定治療は不可欠です。

 一般的に「リテーナー」と呼ばれる装置を用います。時間経過とともに装着時間を短くしていって最終的に就寝時の装着だけで済む取り外しのできるタイプや、歯の裏側に固定して取り外しができないタイプなど、歯の状態に合わせて選択されます。

「矯正歯科治療を頑張って手に入れたきれいな歯並びですから、保定治療もぜひ積極的に取り組んでほしいですね。なかにはリテーナーの装着を歯磨きと同じように習慣化させて、成人してからもきれいな歯並びを守るために、就寝時に必ずつけるという患者さんもいらっしゃいます」(野村歯科医師)

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