2021年衆院選、当選し、女性支援者と記念写真を撮る吉田晴美氏(下列左から2人目)
2021年衆院選、当選し、女性支援者と記念写真を撮る吉田晴美氏(下列左から2人目)
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 投票率を5ポイント上げれば政治は変わる――。東京都杉並区では、市民団体らの取り組みで前回衆院選では投票率が上がり、それまで8期連続で当選していた自民党候補が敗れた。「杉並の奇跡」とも呼ばれたその動きは、区長選や4月の統一地方選にもつながった。今国会の会期末が近づき解散・総選挙がささやかれているなか、杉並区の岸本聡子区長や市民団体の関係者らにこれまでの選挙について聞いた。

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「これまで『奇跡、奇跡』といわれてきたけど、4月の選挙はもう『奇跡』ではないと思った」

 こう話すのは市民団体「杉並の問題をみんなで考える会」(考える会)の世話人・漆原淳俊さん(76)だ。これまで杉並区では、『奇跡』と言われる選挙が二つあった。

 一つ目が2021年の衆院選だ。それまで杉並の選挙区では自民党の元幹事長・石原伸晃氏が8期連続で当選し盤石の強さを誇っていたが、立憲民主党の吉田はるみ氏が当選した。

 二つ目は22年の杉並区長選だ。現職の田中良氏が4期目を目指し、自民、公明、さらには石原伸晃氏の支援も受けたが、野党が支援する新人の岸本聡子氏が187票の僅差(きんさ)で勝利した。

 そして、「もう『奇跡』ではない」というのは、今年4月の統一地方選であった区議会選挙だ。結果は、自民党は改選前の16議席から9議席に減らし、公明党も7議席から6議席に減った。また、新人15人が当選し、現職12人が落選。女性比率もそれまで約3割だったのが、一気に半数を超えた。

 自民党が強い地域で、何が起きたのか。漆原さんはこう語る。

「杉並区では野党共闘ができたことが勝利につながっています。21年の総選挙で山本太郎さんの名前が急にあがりましたが、地道に地元で活動してきた吉田はるみさんへの同情や支援の声が高まり、結果として吉田さんを野党統一候補にする流れができました。ここで自民党の石原さんに勝てたことが大きな転換点になりました」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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市民ボランティアの動きがカギ?