かもめブックスの軒先を借りて、火曜・木曜・金曜にオープンする「夜のパン屋さん」(撮影/写真映像部・高野楓菜)
かもめブックスの軒先を借りて、火曜・木曜・金曜にオープンする「夜のパン屋さん」(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 そのときも必ず出てくるのが「ブランド力の低下」という言葉。「ブランド力」とは一体なんなのでしょう。海外ではSDGsの取り組みをする企業ほどブランド力がアップするのに、本当に不思議です。

「夜パン」で働くビッグイシューの販売者さんは、1990年代後半~2000年代前半に社会に出た就職氷河期世代、いわゆる「ロストジェネレーション」と呼ばれる世代の方も多く、売れなかったパンも「ロスパン」。この「ロス」は人間の都合で生み出されたものであり、利益優先など勝手な都合で捨てられるものがあってはならないと心から思います。

――「夜パンB&Bカフェ」というイベントも主催していらっしゃいますね。

 練馬区にある築150年の古民家を借りて、定期的に実施しています。パンや野菜の販売、本の交換会、余った食品を交換できるフードドライブなど、食事をしても1日ぼーっと過ごしてもいい、のんびりしたイベントです。ここでは「支援を受ける方、どうぞ」というスタンスではなく、主催者も支援する側もされる側も、参加者も出展者も誰が誰だかわからない最高の「ごちゃまぜの場」です。

 先日マッサージコーナーのスタッフが、「子連れのお母さんが来て、“私、お金ないので『福分け券』で、ってすごく凛とした笑顔で言ってくれたの」と嬉しそうに報告してくれました。福分け券は、先に来た人が後の人のためにお金を支払う、このイベントのシステム。払うも使うも自由な券です。今は生きることが大変でも、それは一時的なこと。支援する側もされる側も、混ざり合って垣根がない。サポートしてもらう人が肩身の狭い思いをしない場が大事だと思います。

 ビッグイシューは「雑誌を渡して売ってもらう」のではなく、販売者は個人商店として仕入れて販売するという対等でフラットな関係なのですが、これがとても大事だと思います。

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「おいしそう」からは始まる関係