衣装に小さな鏡の小片を縫い付けるミラーワーク刺繍は、インド西部のグジャラート州を代表する手仕事で、伝統工芸のひとつ。女性たちにより、小さな鏡の周りを刺繍糸でかがり、布にとめていく細やかな作業(写真提供:ハウス オブ ロータス)
衣装に小さな鏡の小片を縫い付けるミラーワーク刺繍は、インド西部のグジャラート州を代表する手仕事で、伝統工芸のひとつ。女性たちにより、小さな鏡の周りを刺繍糸でかがり、布にとめていく細やかな作業(写真提供:ハウス オブ ロータス)

――それがご自身のブランドにつながったんですね。

 世界各国で集めた手工芸品を日本でも紹介できないかと、30代の頃は自宅を開放して陳列することもありました。来てくれた人たちは「まるで世界を旅した気分」と反響も大きかったのですが、雑貨ですから大した利益は出ませんし、周知にも限界がある。そこから始まったのが「ハウス オブ ロータス」です。

 伊勢丹での期間限定ショップから始まり、雑貨だけでなく服づくりに着手することになりました。インドにはハイメゾンのオートクチュールにも対応できる技術がまだまだ残っているので、上質な服の制作が可能なんです。

――買い付けなどでアジアのシビアな現実を目の当たりにすることもありますか。

 家計を支えるために子どもが働く姿を見たり、若い女性の人身売買の話を聞くこともあります。深刻な問題を抱える国は多いのに、実態はこちらからは見えない。これが一番の問題ですよね。

 質のよい手工芸品や農産物を必要以上に安く買おうとすることで、作り手や生産者を苦しめたり、チャイルドレイバー(児童労働)を生むかも……と日本で買い物をするときに意識することが大事だと思います。

――かれんさんにとって「働きがい」を感じるときは?

「働きがい」というより、「生きがい」でしょうか。最近、私たちはなんのために働くのだろうとよく考えます。我々日本人の多くは、「好き」や「楽しい」を我慢し、自己犠牲のもとに仕事へ向き合う傾向にあると感じることがあります。好きなことを仕事にし、収入につながれば素晴らしいことですが、残念ながらそれはひと握りの方々です。となれば、ワークライフバランスに着目し、プライベートも充実させられるような働き方を探ることが重要です。一人ひとりが満足した生活を送るためには社会全体で助け合い、お互いが思いやりを持って協力し合う仕組みも必要になりますね。

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