2022年の合計特殊出生率が1.26となり、05年と並んで過去最低を記録した。日本の少子化に歯止めをかけるのはもはや不可能だが、何もしなければ事態はさらに悪化する。そうなれば、日本経済は縮小スパイラルに陥り、やがては崩壊というシナリオに突き進むしかない。
国民の大多数も、そのリスクを肌で感じている。だからこそ、世論調査で、少子化対策が関心事項上位に入っているのだ。
こうした国民世論を受けて迷走しているのが岸田文雄首相と自民党だ。
実は、防衛費を確保するための法律が、このコラムがアップされる前後にも成立する段取りになっている。その内容を一言で言えば、とにかく少しでも財源が見つかったら、とりあえず防衛費に全部回すというものだと思ってもらえれば良い。
見つかった財源は全て防衛費に回すのだから、子育て支援の財源は何もないということになる。残された道は、国債、増税、保険料引き上げ、そして他の予算の削減のいずれかである。だが、衆議院解散総選挙が近づく中で、岸田首相としては、国民が嫌がることは避けたいところだ。
例えば、増税も検討対象に加えよと経団連などから提案されているが、法人税増税は、経団連の反対でできない。所得税増税は防衛費確保のために東日本大震災の復興財源としての増税分を流用することになっているのでこれ以上は無理。残る消費税増税は、やりたいのはやまやまだが、国民の反対が強く、選挙前に提示するのは難しい。
そこで考えたのが、社会保険料の引き上げだ。消費税などと違い給料天引きなので、負担感が小さいという理由で有力視された。しかし、これは国民を馬鹿にした議論だ。保険料は強制的に取られるという点では、税金と同じ。現に国民健康保険の財源は、保険料として取っても地方税として取っても良いことになっている。
この点もすでに国民には見破られ、ネット上でも炎上した。
そこで、これを鎮めるために、「こども特例公債」という話が出てきた。子育てに使えば子供が増えて、将来その子供たちが成長して納税してくれるから、国債を発行しても大丈夫という理屈である。