しかし、その効果が出るのは早くても20年後。しかも、財務省の巻き返しがあったのか、6月1日に発表された「こども未来戦略方針」案では、単なる「つなぎ国債」になることが判明した。とりあえずは国債で賄うが、2028年度までに安定財源を確保するという。つまり、5年後には何らかの負担増となるということだ。結局は増税か保険料引き上げという話になる。国民を馬鹿にする騙しのレトリックだ。
保険料引き上げ反対の声が高まったからなのか、保険料引き上げではなく、企業を含めて経済社会活動に携わる人たちで広く負担する「支援金制度」を作るという話も出てきた。しかし、よく聞けば、支援金を保険料に上乗せして集めるという。保険料の引き上げと全く同じだ。これもまた国民を馬鹿にする言葉遊びである。
さらに目眩(めくら)まし的な話として登場したのが、「こども金庫」だ。子育て支援をひとまとめにしてわかりやすくするために特別会計を作り、それをこども金庫と呼ぶ。
新しい特別会計、金庫といっても、中は空っぽ。お金が生み出されることはない。しかし、茂木敏充・自民党幹事長などは、金庫を作り、実質的に負担増にならないようにすると全く意味不明なことを堂々と公言している。
岸田首相もこれに歩調を合わせて国民の負担増の話を避け、「歳出改革」で財源を生み出すと言い始めた。歳出改革と言えば、聞こえは良い。利権絡みの予算をカットすればいくらでも財源は出てくると思っている有権者も結構いる。
しかし、政府自民党が自分たちの利権を削ることなどあり得ない。
彼らが言う歳出改革とは、社会保障改革のこと。改革とはいっても要するに医療や介護サービスのカットと負担増のことを指しているのだ。
25年に団塊の世代全員が後期高齢者になるので、医療介護の需要はこれからどんどん拡大する。逆に言えば、一番の削りどころなのだ。
そして、この原稿を書いている最中に、また、驚くようなニュースが入ってきた。つい最近まで、子育て支援拡大策の規模は、児童手当拡充、教育費負担軽減、保育サービス拡充、育休給付率引き上げなどを含めた施策の費用年間3兆円とされていた。ところが、突然降って湧いたようにそれが3.5兆円に増加した。官邸からの指示ということだ。