――今回の写真集の特にこだわった部分を教えてください。
造本という部分では、今回デザインは大島依提亜さんにお願いしています。大島さんといえば映画のポスターデザインなどでとても有名ですが、自分も映画が好きなので、大島さんとはいつかお仕事をしてみたいと思っていました。それでピラミデンの情景がどこか映画っぽい気もしたので、依頼させていただきましたが、おかげさまで本当にかっこいい本にしていただいたと思います。
本全体もぱっと見はとてもシンプルなんですが、ところどころにマニアックな意匠を凝らしています。印刷は多くの写真集を手がける京都のサンエムカラーさんにお願いして、普通の印刷ではあまり使われないちょっと凝った工夫もしています。廃墟というとやはり陰影がポイントになるんですが、北極の廃墟という独特な場所の冷たさとか暗さだったり、空気感の再現含めて、全体にとても良いトーンで出ていると思います。
――最後に本書は「Lens of Wonder」シリーズと冠されています。このシリーズについて教えてください。
まだ具体的なシリーズのテーマを考えているわけではないんですが、とりあえずは世界の「特異点」といいますか、今回のピラミデンのように絵力だったり、歴史的に興味深い場所に、ワンテーマ一冊でフォーカスした写真集のシリーズとして出せていければ良いなと思っています。続刊としてすでにバヌアツのカーゴカルト編も刊行を予定していますが、そのあとどうなるかは、まだ全然未定です。
佐藤健寿
写真家。世界の民俗から宇宙開発まで、世界120カ国以上を巡って幅広いテーマで撮影。代表作『奇界遺産』『世界』ほか多数。写真展「佐藤健寿展 奇界/世界」(山口県立美術館他)、「世界 MICROCOSM」(ライカギャラリー東京他)ほか各地で開催。instagram:@x51