「子育てのしやすさももちろん大切ですが、男女問わず地方で働ける場所の設置が求められています。コロナ禍で都心部の多くの企業が、テレワークの可能性を認識したのでは。全国各地で優秀な人材を雇用できるチャンスでもあります。また、いろんな企業が地方に入ることで、地方経済も活性化しますし、お互い『win-win』では」
その上で、「地域交流の場の設置も進めていきたい」と鈴木氏は語る。
「鹿児島県いちき串木野市では、サテライトオフィスを開設した傍ら、オフィスのコ・ワーキングスペースを地元の人の集会に利用してもらうことで、地元の人と企業、移住者の交流の場を実現してきました。企業のオフィスなどが、地域住民の集まれる場所となれば、さらに活性化するとも考えていますので、今後もこのような事例を増やしていきたいと考えています」
●補助金ばら撒く行政 地域住民とのトラブルも
国も2019年から移住支援事業を始めている。
地方へ移住する際に条件を満たすと世帯あたり100万円(単身は最大60万円)が支給される。移住先で地域の課題解決を目的とした起業をする場合は、最大200万円が補助され、前出の100万円と併用も可能だ。そのうえ、子ども1人当たり100万円の補助金が出ることも決定している。
自治体も誘致に必死だ。各自治体は独自に、移住の際の支援金や補助金の制度をつくっている。東京都から最短で75分の新潟県湯沢町では、上越新幹線を利用して東京都内へ通勤する人に対し、新幹線の定期券を毎月最大5万円、10年間補助する。
山梨県都留市では条件を満たす30歳未満を対象に、返還する奨学金の一部として最大100万円が支給される。宇都宮市では住宅購入時に最大で60万円の支援金を出す。
ある自治体の幹部は「地方がみな支援金をばらまいて『移住者獲得戦争』になっている。どこも充実していて、支援金のばらまきは横並びとなっている」と実情を語る。
一方で、地方移住ではトラブルも絶えないという。